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トピックス
(1) 都田小学校退職強要問題

条件付採用者に退職強要した校長・市教委の責任を問う


赤田 圭亮
はじめに
 四月一日、 北支部本多真味組合員は、 条件付採用を解かれ、 正式に正規採用となった。 一ヵ月にわたる校長、 市教委による退職強要にめげず、 横校労とともに勝ち取った大きな成果である。 事件の概要については、 四月二日付組合ビラ 「条件付採用期間の退職強要をはねのけ雇用継続を勝ち取る」 をご覧いただければ、 恣意的且つ無節操な退職強要の実態についてご理解いただけると思う。 四月八日には、 都田小学校長木村光義に対して申し入れ書を手交しており、 今後の交渉の中で市教委と合わせてその重い責任を追及していく所存だが、 本稿では、 @条件付採用とは何か、 A条件付採用をめぐる判例の検討、 B今回の事件の特徴、 C横浜市教委のシステム上の問題点について明らかにしておきたい。

*条件付採用とは何か
 地方公務員法は条件付採用について 「・・・職員の採用は、 すべて条件付のものとし、 その職員がその職において六月を勤務し、 その間その職務を良好な成績で遂行したときに正式採用になるものとする。 ・・・」 (第22条第1項) と定めている。 また但し書きにおいて 「人事委員会は、 条件付採用の期間を一年に至るまで延長することができる」 としているが、 教員の場合は一九八八年の教育公務員特例法改正で 「小学校等の教諭等の任命権者は、 小学校等の教諭等に対して、 その採用の日から一年間の教諭の職務に遂行に必要な事項に関する実践的な研修 (初任者研修) を実施しなければならない。」 (第20条の2) を根拠として、 同法において 「公立の小学校等の教諭等に係る地方公務員法第二二条第一項に規定する採用については、 同項中 「六月」 とあるのは 「一年」 として同項の規定を適用する。」 (第13条第2項) として特段の定めをなしている。
 つまり、 初任者研修期間を一年とするために、 条件付採用期間も一年となる、 という構造である。 しかし、 実際はどうだろうか。 初任者は、 年々細分化される初任者研修に駆り出される一方、 日々、 一般職員とほぼ同量、 同質の仕事をこなさなければならない。 四月一日に学級担任となれば、 その直後から直接児童、 生徒と関わり、 保護者とも関わらなければならない。 条件付採用期間が六ヵ月であったときは、 初任者研修も少なく、 長期休業を終え一ヵ月を経過した段階で正式採用となったことを考えれば、 現在のシステムはかなり過酷といわなければならない。 初任者に限らず、 クラスや保護者との関わりなどの問題が生起するのは一年の下半期であり、 その時期であっても初任者は、 かなりの頻度で初任者研修に出席しなければならない。 日常的な超過勤務抜きには、 この期間を無事終えることは難しいし、 健康面での不安があれば三月まで勤務しきることはたやすいことではない。
 一方、 指導力不足教員、 不適格教員問題が焦点化されている現在においては、 新採用教員に対しても同様のチェックが入ることは明らかであり、 条件付採用という任命権者の裁量の範囲が大きい制度においては、 異議申立てなどのシステムがないことから、 恣意的な退職強要が行なわれる可能性も高いのである。

*条件付採用をめぐる
 判例
 条件付採用については一般的には 「条件付採用期間中の職員といえ、 法令所定の事由に該当しない限り分限されないという身分保障を受け、 分限処分についての任命権者の裁量は、 その判断が合理性をもつものとして許容される限度を超えた不当なものであるときは、 裁量権の行使を誤った違法なものになる。」 (ぎょうせい刊 「教職員法律問題集」 文部省内教育判例研究会編) とされており、 初任者といえども、 一般職員同様、 法律に照らして合理性がなければ、 分限免職にはならないということである。
 そうなると問題は、 初任者の勤務状況がどの程度であれば分限免職になるのか、 である。 一例として一九七八年二月二四日横浜地裁の判例を見てみよう。 これは条件付採用期間が六ヵ月の時期のものであるが、 この教員の場合、 一学期の要出勤日数九二日のうち、 出勤が六五日、 休暇が二七日であり、 出勤した日のうち一時間以上の遅刻が少なくとも一六日。 夏期休業中は、 二三日間自動車教習所に泊りこみで連続講習を受け、 登校日など八日を欠勤。 九月一ヵ月間の要出勤日数二四日のうち、 一七日を欠勤した。 また遅刻のため打合わせにほとんど間に合わず、 遅刻の連絡もないことがあった。 欠勤の際に補欠時間の指示がなく、 補欠授業に混乱が生じた。 また、 事実に符合しない通勤届けを提出し、 真実に合致しない通勤手当の認定を受けていた。 さらに中学校までの通勤に二時間乃至二時間以上を要する場所に居住し転居の勧めに応ぜず、 欠勤、 遅刻等でしばしば自習になることから、 生徒が不満を感じPTAの会合でも善処を望む声が出ていた、 とされる。 (三崎中学校事件)
 この事件について横浜地裁は、 「…学校教員たる職務に引き続き任用しておくことは適当でないと評定されてもやむをえないものがあるというべきであり、 免職処分は裁量権の行使において、 合理性をもつものとして許容される限度を超えた不当なものがあるとは認めがたい。」 として、 分限免職を是とする判決を言い渡している。
 確かに被告教育委員会側の主張を全面的に認めれば、 致し方ないとも考えられるが、 本人が腰痛を持っており、 そのことについて何らかの手当てができなかったのか、 また欠勤などについても管理職の指導がどのようなものであったのか、 こうした服務上の問題以外に何らかの経緯はなかったのかどうか。 さらには、 新規採用教員として採用を決定した行政側の採用システムに問題はなかったのか、 などの疑問は残る。
 ともあれ、 条件付採用者に対する分限免職の例をみると、 多くはこうした服務上の問題が挙げられており、 その 「程度」 をどう勘案するかに焦点が絞られていることは間違いない。

*都田小事件の概略
 今回の都田小における問題は、 こうした判例と比較した時、 分限免職の対象となるかどうか、 答えはすでに明らかである。 それどころか、 これは管理職の不適切な人事配置によって引き起こされた公務災害事件と言うべきではないだろうか。
 他県において教職経験が一二年あるとはいえ、 本多先生は横浜においては新採用教員である。 見も知らぬ土地に降り立ったばかりの教員に、 六年の学年主任と学級担任を命ずることは、 校内人事配置として適切なものだったのか。 小学校においては、 一〜五年の学年主任と六年学年主任は、 仕事としてかなり異質なものと考えるのが一般的であり、 児童の状況がどうあれ、 五年からのもちあがりの教員が主任を受け持ち、 新採用者への助言を行なうのが一般的なのではないだろうか。
 木村校長は、 こうした人事配置に対して何ら疑問を持たず、 児童の状況や指導方法についても特段のことを行なっていない。 それどころか、 休暇の申請や出張の可否の判断等横浜の基本的な職場慣習についても、 指導をサボタージュしている。
 市教委による事情聴取の際に初めて明らかになった木村校長の意見具申の内容がそのことを如実にあらわしている。 木村校長が、 本多先生を正式採用に及ばない理由として挙げたのは次の三点と思われる。
@校内重点研に出席せず、 無断で出張に出かけたことA一度無断欠勤をしたことがあることB療養休暇中、 無断で県外に出たこと。 @については、 本田先生は出張命令簿を提出しており、 それに対して校長の押印による出張命令が行なわれているし、 旅費もすでに支給されている。 一番の問題は、 この件について木村校長は事前事後いずれにおいても何らの指導、 注意も行なっていないことである。 Aについても、 事後の調査によれば本多先生は通院のため休む旨を副校長に電話連絡を入れており、 そのことを副校長が確認している。 無断欠勤という事実はないのである。 この点について木村校長は市教委に始末書を提出している。 Bは、 本多先生は職場に電話を入れており、 管理職不在のため、 その旨当番の職員に告げているのである。 この点についても校長の指導や注意は一切ない。
 こうしてみてみると、 木村校長はどこかの時点で本多先生を退職に追い込もうと決心し、 あとづけ的にその理由を探し、 意見具申の内容としたというのが実態と思われる。 同じ職場で同様の退職強要ですでに退職してしまった新採用教員がいたことを考えると、 あながちこうした推測が間違っているとはいえない。

*市教委のシステムこそ
 問題
 木村校長は、 療休中の本多先生に対し 「療休が一〇〇日を越えると採用取り消しになるかもしれない」 と連絡をいれている。 これは、 何らかの 「条件」 が市教委内にあることを示唆するものなのか、 それとも木村校長の独断の発言なのか。 どちらにしても、 療養休暇の日数だけで採用が取り消される事例は今までにもないし、 裁判となった場合、 療養休暇に入らざるをえなかった状況が問われることになるだろう。
 また、 木村校長は復帰してきた本多先生に対して 「依願退職しなければ分限免職になる」 と伝えている。 これもまたその根拠がどこにあるのか、 が問題となる。 依願退職をしてしまえば、 木村校長が提出した意見具申の内容が精査されることはなく、 残るのは 「新採用教員が自ら退職という判断をした」 という事実だけである。
 市教委もまた、 事情聴取の際対応した指導主事が 「このままいけば処分される可能性が高い」 と述べたというが、 この根拠もきわめて曖昧であるし違法性の高いものと言わざるをえない。 その際、 依願退職願の提出期限を延ばすことを告げたことからも、 違法な退職強要が行なわれたと断じざるをえないのである。
 結果として、 本多先生が横校労に救いを求め、 それに応ずる形で顧問弁護士を通じて意見書を提出、 その結果、 分限免職処分はなかったわけだが、 先の判例を見ても明らかなように、 本多先生が分限免職の対象となる理由などどこにも存在しない。 市教委は、 採用取り消しの取り消しを求める裁判を起こされたとき、 それを維持できる材料がないことを認め、 処分をあきらめたと、 私は考えている。
 この事件において最大の問題は、 新採用教員に何らかの問題が生じたとき、 依願退職願を書かなければ、 分限免職になるという脅しによって、 現場に生起した問題に蓋をし、 悪いのは個々の新採用教員であるとしてしまう、 現在のシステムである。 校長の独断だけによらず、 副校長の意見も合わせて聴取するとか、 意見具申の内容について事前に本人に告知するとか、 異議申立てをする機会の設定や代理人制度の導入とか、 このブラックボックスをあけるシステムはいくらでもあるのである。 市教委がそうしようとしないのは、 新採用教員のクビなど鳥の羽より軽いと考えているからであるし、 そのことが結果的に管理能力のない無能な校長を野放しにし、 有為な人材を失っていくことになるとしたら、 教育委員会議の責任はきわめて重大であると言わざるを得ない。
 四月一日の初任者研修において、 あらたに教育センター所長に就任した丸山修由は、 「昨年は二十三人の初任者が辞めた。 うち五人は辞めていただいた」 と述べたという。 これは、 少なくとも五人の退職強要があったという明らかな証左ではないのか。
 私達は、 今後木村校長ばかりでなく、 市教委当局の責任についても問うていくつもりである。 二十三人が辞めたというが、 その責任は市教委にないのか。 それとも市教委は 「それは、 歩留まりの範囲で・・・」 とでも言うのだろうか。

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