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横校労ニュース
トピックス
●車通勤問題
「横浜自動車通勤禁止処分」 差止め訴訟始まる
横校労は、 七月一五日に、 組合員一名を原告に立て、 一〇月一日に迫った自動車通勤禁止処分の差止め訴訟を起こしたところである。
 この処分は、 横浜市教委が昨年一一月一日、 市内の小・中・盲ろう養護学校長に出した 「市立学校に勤務する教職員の 『自家用車通勤』、 『通勤用自家用車の学校敷地内駐車』 の原則禁止について」 の通知に依るものであるが、 これは、 児童生徒の安全確保等を理由として、 一律に、 教職員の自家用車通勤と学校敷地内駐車すべてを禁止し、 その上で、 一定の条件を満たした場合に限り、 通勤や駐車を認める、 というものである。
 これに関してわれわれ横校労は、 本通知の問題点や労務課との交渉の経過を、 機関誌上で指摘し報告してきたところであるが、 訴訟にあたり、 今一度これらをまとめてみたい。

通知は市教委と浜教組と校長会の合作
 労務課は、 市立学校に勤務する学校労働者で組織された幾つもの職員団体に対し、 何の説明も、 提案も、 報告も一切しない中、 浜教組執行部と市校長会だけには、 遡ること半年以上も前に本通知の素案を示すという、 不当極まりない動きをしていた。 労務課との交渉の席で、 「浜教組に提示したことでメリットはあったのか」 とのわれわれの追及に、 「現場でひっくり返ることはないとの感触を得た」 と労務課は堂々と答えている。
 通勤手段の改変という、 重大な勤務条件にあたる事項が、 労務課と浜教組と市校長会の一部幹部によって密かに検討され進められたことがどれだけ問題であるかは、 労務課自身によって、 浜教組以外の各労組に、 この間の進め方を謝罪したことで十分に証明されたのである。 それにしても 「ひっくり返ることはないとの感触」 とは、 どういう方策で得られたものなのか。 あまりにも現場をなめきった発言ではないか。 だからこそ、 われわれは、 こんな通知は 「ひっくり返したい」 と願う現場の思いを、 提訴という形で表したのである。

通知に根拠なんか全くない
 さらに重大なのは、 これまで何の制約もなかった通勤手段を一方的に限定、 禁止することの乱暴さである。 この強圧的な手法に対し、 われわれは驚くと同時に、 疑問をふくらませた。 一体全体どのような法的根拠に基づく処分なのか、 ということである。 それゆえ、 交渉の場でもこれは中心的な論点となったのだが、 労務課は 「地教行法第二三条九項に基づく教育長の職務権限の一つと捉えている」 と述べたのである。 実は同項は 「保健、 安全、 厚生及び福利」 に関するもので、 どうしてこれが根拠となるのか、 理解に苦しむばかりである。 しかも、 他の労組には、 学校の管理と経費の負担を定めた学校教育法第五条を根拠として示す等、 労務課の回答は一貫していない。 それは、 本通知が根拠など全くない無理の上に成り立っていることを自ら露呈させたことに他ならない。
 今回の通知に対し、 緊急事態の対応や持ち帰り残業等、 教員の仕事に車は不可欠だ、 という類いの、 業務と結びつけた批判を聞くことがあった。 言い方を変えると、 市職員や事務職員には自動車通勤禁止は仕方がない、 ともとれる発言である。 われわれはこういう考え方に与しない。 そうではなく、 こんな一方的な処分は適法なのか、 という根本的な問いこそが発せられなければならないとわれわれは考えてきた。 提訴は、 その問を公に表したものである。

九月一二日より公判開始、 今後の展開に注目を
 われわれは、 われわれが依って立つ根拠を憲法一三条に求めた。 同条は、 公共の福祉に反しない限り、 国民は幸福追求の権利を尊重されると定めている。 市教委による今回の処分が、 その権利を奪うことができるほどの合理的な理由に基づくものなのかどうか、 われわれはそれを問いただしたい。
 第一回弁論は九月一二日。 本号が読者の手に届く時にはすでに済んでいるが、 裁判は簡単には終わらない。 弁論の都度、 経過をこの紙面に載せるので、 今後の展開にぜひ注目して頂きたい。 また、 傍聴やカンパを含めた裁判の支援を、 厚く厚くお願いするものである。
   (執行委員会)

訴   状  ( 抜粋 )

第1 請求の趣旨
 1 横浜市教育委員会は、 原告に対し、 自動車通勤禁止処分をしてはな
   らない。
 2 訴訟費用は被告の負担とする。

第2 請求の原因
 1 原告は、 横浜市教育委員会に勤務する教員である。
 2 横浜市教育委員会は、 2004 年 11 月 1 日に教職第 209 号教教労第 
   370 号で 「市立学校に勤務する教職員の自家用車通勤、 通勤用自家用   車の学校敷地内駐車の原則禁止について」 の通知を発した。 (甲 1 号
   証)
 3 その通知の内、 「自家用車通勤の原則禁止」 については2005 年 10 
   月 1 日から実施することとなっている。 (甲1号証 3 項)
 4 従前、 横浜市教育委員会は、 その通勤方法については制限を設け
   ていなかった。 その結果、 教職員の中で自動車通勤をしている者は、
    全教職員の 45 パーセントであった。
 5 原告は、 1980 年 4 月から雇用契約を締結し現在に至っているが、 
   その間 1981 年頃から自動車通勤をして現在に至っている。
 6 被告は、 自動車通勤を禁止する理由として以下の諸点をあげている。
  (1) 約半数の教職員が自家用通勤をしており、 これを減らすことにより、
    通学途中における児童・生徒の交通安全をより確保します。 教職員
   自らが自己規制しなければ、 社会一般、 地域住民の理解と協力が得
   られません。 また、 教職員においては、 学校現場で環境教育を担っ
   ていることから、 自動車の使用抑制等について、 率先垂範すること
   が期待されております。
  (2) 再三、 自家用車通勤の自粛、 安全運転を指導しているにもかか
   わらず、 教職員の交通事故は依然として発生しており、 市民の信頼
   を失いかねない状況にきています。
  (3) 交通事故による負傷等により勤務を休まざるを得ないことになれば、
    児童・生徒、 同僚等に対し迷惑を及ぼすこととなります。 また、 重度
   の負傷による退職、 死亡に至った場合は、 本市としても貴重な人材
   を失うことになります。 (甲 1 号証 1 頁)
 7 原告は、 その通知処分の結果、 2005 年 10 月 1 日から自動車通勤
   を禁止されることとなる。
 8 原告は、 被告の処分は以下の理由により違法であると判断している。
  (1) 幸福追求の権利の侵害
   一 憲法 13 条は、 すべての国民は、 幸福追求に対する国民の権利
     については、 公共の福祉に反しない限り、 国政の上で最大限の尊
     重を必要とすると定めている。
   二 自動車は、 国民の移動手段として、 精神的楽しみとして、 現代
     社会において欠かせないものである。
     何人も国民が自動車を所持し、 運転することは制限出来ない。
   三 よって、 自動車通勤の禁止は、 幸福追求の権利を侵害するもの
     であり、 違法である。
  (2) 被告の禁止の理由は、 幸福追求の権利を奪うことが出来る合理
     的な理由、 根拠とならない。
    理由は以下の通り。
   一 理由−前段について
    @ 横浜市における児童生徒の交通事故数の中で、 教職員の自動
      車通勤の途中に発生した事故が存するか。
    A 仮に存するとした場合どれだけの割合になるのか。
    B その場合、 他の加害車両に比して、 発生率が高いと言えるのか
      どうか。
    C 被告は、 具体的な数字を示した上で説明をしていない。
    D この点に関し、 通知の中でも被告が配布したこれに関する質疑
      応答集の中でも全く明らかにしていない。
    E 以上が理由−前段の合理的根拠の不存在である。
   二 理由−後段について
    @ 被告は、 地球環境上、 自動車を廃止することが相当というの
      か。横浜市は自動車の使用を廃止するというのか。 又、 職員の自
      動車使用を廃止するというのか。 その結論のないまま横浜市教
      育委員会の教職員のみの自動車の使用を禁止することは合理
      性が存しない。
    A 被告及び横浜市は (1) を主張するものではないと思われる。 と
      すると、 学校現場で環境教育を担っていることから、 自動車の
      使用抑制等について、 率先垂範することが期待されるというの
      が理由となる。 教職員に対してだけそのような理由で自動車の
      使用という幸福追求の権利を奪う合理的根拠となるものではない。
    B 真に環境を思うのであれば、 横浜市をあげて環境教育に取り
      組みたいというのが筋であるし、 そうならば、 自動車通勤の禁
      止は横浜市の全職員に通知すべきである。 しかるに、 この通知
      が学校に対してだけであることからして、 この理由が後付けのも
      のに過ぎないのは明らかである。
   三 理由二について
    @ 教職員の交通事故が、 全市内での交通事故の中で、 どの程
      度の割合を占めるのか。
    A それが他職種に比べて多いのか否か。
    B それが横浜市職員に比べて多いのか否か。
    C 教職員の交通事故が市民の信頼を失ないかねない状況にきて
      いるとは、 具体的に何を言っているのか。
    D 被告は具体的数字を示した上で説明していない。
    E この点に関し、 通知の中でも被告が配布したこれに関する質疑
      応答集の中でも全く明らかにしていない。
    F 以上が理由二の合理的根拠の不存在である。
   四 理由三について
    @ 自動車通勤により、 被害に合う場合と電車、 バス、 自転車、
       徒歩による通勤により被害に合う場合との発生件数、 割合はど
      うであるのか。
    A 重度の負傷による退職、 死亡は前者と後者とで発生件数、 割
      合はどうであるのか。
    B 被告は具体的な数字を示した上で説明していない。
    C この点に関し、 通知の中でも被告が配布したこれに関する質疑
      応答集の中でも全く明らかにしていない。
 9 原告に重大な損害を生ずるおそれが存する。
  (1) 自動車通勤は、 原告に与えられた憲法上の権利である。
  (2) 原告は、 24 年間自動車通勤をしてきている。 従って、 原告に帰属
     する確定的な権利である。
  (3) 原告は、 自動車通勤を禁止されることにより、 通勤時間が延長し、
     それにより得られる利便性 (例えば重量のある荷物の移動、 他者
    との接触の回避、 雨天、 荒天からの回避等) が奪われ、 その結
    果、 負担が増大する。
  (4) 勤務前後の連続的な自動車利用による利便性が奪われる。
  (5) 以上の損害は、 禁止されることにより即発生するのであり、 回復し
    得ない重大な損害である。
 10 被告が、 本件処分をするにつき、 違法であることは法令の規定から  
   明らかである。
  (1) 自動車通勤は、 憲法上の権利である。
    合理的理由のない本件において、 禁止処分は違法である。
  (2) 原告は、 24 年間に渡り、 被告から自動車通勤の権利は認められ
     てきているのであり、 その権利は確定的権利であり、 合理的理由
     のない本件において、 禁止処分は違法である。
 11 以上の事実、 根拠から請求の趣旨記載の請求をするものである。

「実施機関 (=教育委員会) から ・・ 合理的説明はなかった」 (答申書)

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