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管理統制強化の改革には絶対反対! 
―教育再生会議第二次報告を読んで―

                         針 谷 秀 雄
参院選挙の中で 「教育の再生の方向を論議したい」 と意気込んでいた安倍内閣も今や支持率低下でそれどころではなくなってしまった。 当の再生会議室長の義家弘介も参院選挙出馬のために同職を降りてしまった。 これで 「第二次報告」 も色褪せたものとなってしまったようだが、 選挙結果次第では如何にでもなる代物であり、 見過ごすわけにはいかない。

授業時数を増やしても学力向上にはつながらない。
 提言の第一の柱は 「学力向上にあらゆる手立てで取り組む」、 副題が 「ゆとり教育の見直しの具体策」 となっている。 具体策として五つの内容が示されている。
 第一が、 「授業時間一〇%増の具体策」 である。 一〇%増については既に次の学習指導要領の改定において実施されることは間違いなく、 今回あえて取り上げたのは 「夏休み等の活用、 朝の十五分授業、 四〇分授業にして七時間目の実施など」 「教育委員会、 学校の創意工夫を生かした弾力的な授業設定による授業時数増を図る」 「国は、 学校週五日制を基本としつつ、 教育委員会、 学校の裁量で、 必要に応じ、 土曜日に授業 (発展学習、 補充学習、 総合的な学習の時間等) を行えるようにする」 としている。
  「ゆとり教育」 の見直しとして最初に掲げたのが、 学校五日制で削減された授業時数をどう増やすことができるかであった。 その結論が、 土曜日の復活である。 学校五日制や二学期制導入の経緯などには言及せず、 とにかく授業を増やすことを第一次報告に続けて取り上げた。
 本市では、 「土曜学校モデル事業」 が新規事業として予算化されており、 「子どもの学習・体験学習などの機会を提供する」 取り組みが始まっている。 教員の土曜日の勤務割り振りもできることになっており、 土曜日の復活だけを取り上げれば導入は難しいことではない。 また、 現場では既にサマースクールとして補充学習や総合的な学習が取り組まれており、 教育委員会が 「土曜授業の促進」 を掲げれば、 簡単に実施の方向に進むであろう。 土曜日が復活すれば、 もはや戻ることはできない。 土曜日は復活するわ、 授業時間は増えるわで、 教員も子どもたちもゆとりを完全に失ってしまい、 今以上に忙しくなり、 学力向上どころではなくなるであろう。
 確かに授業内容を削減した 「ゆとり教育」 は学力低下を招いたという声はあるが、 それだからと言って、 授業時間を増やせば学力が上がるというものではない。 再生委員の中には 「反復練習」 による点数アップを学力向上だと評価する者がいるが、 そのような学習スタイル、 学力論は 「ゆとり教育」 とは縁遠いものであった筈である。
 今問題にしなければならないことは、 学力の 「二極化」 が進んでいることである。 それに伴って学習意欲も教育条件も差が広がっているということである。 学力低下はその平均値の結果だけにすぎない。

研修漬けでは教員の授業力アップは図れない。
 第二が、 「全ての子供にとって分かりやすく、 魅力ある授業にする」 である。 そのために、 「国は教科書の分量を増やし」 「主権者教育や消費者教育」 「英語教育を導入」 しなさい、 「学校は、 読み書き計算の反復練習」 「食育や読書」 「IT授業」 をしなさい、 「国が示した各教科の到達目標を基準にして、 学校は絶対評価」 をしなさいとなっている。
 教える内容から到達目標まで、 全て国に管理統制された状態では、 魅力ある授業など展開できる訳がない。 ましてや、 「全ての子供に分かりやすく」 授業をするなどは到底無理なことである。 再生委員のメンバーが現場のことを全く理解していないとしか考えられない。 国がしなければならないことは、 よりよい教育条件を整備し、 よりよい教育環境をつくることである。
 第三が、 「教員の質を高める、 子供と向き合う時間を大幅に増やす」 である。 そのために、 「教員研修と教員評価を踏まえたメリハリある教員の給与体系の実現」 を図るとある。 学校現場は、 従来からあった研修に 「社会の要請に応えた教育内容」 の研修も加わって一層多忙を極めており、 休憩時間もとれず、 超過勤務が日常化している。 これではとても子どもと向き合う時間など取れる訳がない。 さらに、 教育現場のIT化を促進するために地域人材を活用したり、 校内LAN・教師用パソコン等IT環境を整備したりするとある。 研修さえすれば、 教員の質が高まると信じて疑わない再生委員の認識レベルが見え見えである。
 他方、 教員給与の一律支給を止め、 「頑張る教員を支援する」 するために給与格差を付け、 「副校長や主幹等の配置」 によって管理職体制を強化すれば、 教員自らが頑張るであろうし、 優秀な人材も確保できるとしている。 ところが、 教員給与財源は現状のままとなると、 後は教員を序列化して給与格差を付ける方法しかない。
 教員を競争に駆り立て、 成果主義による差別賃金を導入することに絶対反対である。
 第四が、 「学校が抱える課題に機動的に対処する」 とある。 危機管理体制を強化し、 「学校問題解決支援チーム」 なるものを設置し、 地域関係者、 専門家が総がかりで 「子供たちに対処する」 よう求めている。 そして 「説明責任を果たす」 と並んで、 「全国学力テスト」 の扱いに言及している。
 全国学力テストの 「学力不振校に改善計画書を提出させ」、 教員増で対応し、 成績優秀校には予算配当を拡大するとしている。 ここでも、 学校間競争を煽れば、 成績アップにつながると考えている。 今取り組むべきことは、 学級定数を減らし、 教員の定数増を図ることである。
 第五は、 「学校現場の創意工夫による取り組みを支援する」 とある。 「学級編制基準を大幅に弾力化し、 専科教員や少人数指導教員を加配する」 としている。
 ここでも、 教員定数を増やすことではなく、 あくまでも 「実態に即した教員の配置」 を工夫しろということである。 なぜ、 財政措置の伴わない改善だけを求めるのだろうか。 財政審議会に物を申すことは格下の再生委員会のメンバーには思いもよらぬことなのだろうか。

道徳を徳育として強化しても自立した子どもは育たない。
 提言の第二の柱は 「心と体―調和の取れた人間形成を目指す」 として、 具体策として 「徳育を教科化し」 「体験活動を小・中学校で一週間実施し」 「親の学びと子育てを応援する社会をつくり」 「地域ぐるみの教育再生に向けた拠点をつくる」 「社会総がかりで教育再生のためのネットワークをつくる」 を取り上げている。
 いじめや犯罪の低年齢化は子どもたちの規範意識の低さに原因があり、 徳育を新たな教科として位置づけ、 学校・家庭・地域が一体となって 「道徳教育を充実させる」 ことを目指すというものである。
  「徳育」 では点数評価はしないとしているが、 教科書を用いた徳目主義によって、 「現在の道徳の時間よりも指導内容、 教材を充実させる」 としている。 安倍政権は先の教育基本法改悪の中で、 「愛国心」 を教育目標に盛り込んだ。 その結果、 「愛国心」 に対する児童生徒の姿勢を評価した学校もいくつか出て来ている。 「将来的には成績判定がされる」 であろうことは明白である。
 政府・文科省が徳目を掲げて、 それに沿った教科書を使わせ、 授業時間を確保させることによって、 子どもたちの規範意識を高めさせたいとしているのである。 価値規範は当然ながら、 国がつくるとしている。 こんな価値規範を押し付けられてはたまらない。 「ふるさと・日本・世界の偉人伝や古典」 を取りあげた教科書を使うとなれば、 「修身」 の復活だと批判されても仕方あるまい。
 さらに、 「脳科学や社会科学などと関連」 させて 「子供の年齢や発達段階に応じて教える徳目の内容と方法」 を決めるとある。 提案の別添資料 (子育てにかかわる科学的知見の例) には、 「情動は生まれてから五歳ぐらいまでにその原型が形成される」 「健全な発達のためには乳幼児教育が重要」 「二歳以下の子どもにテレビ・ビデオを長時間見せないように」 と続き、 「朝食をきちんと食べる」 習慣を身につけるとある。 家庭にはそれぞれの子育て観、 条件があるにもかかわらず、 一方的に健全な家庭に健全な子どもが育つ論を繰り返している。 その他関連諸団体の提言もまた、 レベルが稚拙であり検討に値しないものである。
 体験活動については、 「小学校の集団宿泊体験、 中学校の職場体験活動をそれぞれ一週間程度実施させ、 高校では奉仕活動を必修化」 させて、 徳育教育実践の場として活用しようと考えている。 そこでの活動内容も、 上から押し付けられたものとなっており、 子どもたちの自主性、 自発性に委ねられるものとはなっていない。 これでは強制的な労働・奉仕体験に終わってしまう。 マイナス体験でしかない。 やるべきではない。

 以上のように第二次報告は、 国が 「授業で学力を」 「研修で教員を」 「徳育で子供を」 レベルアップさせるために教育の管理統制を強化しようとするものに他ならない。 このような教育改革の提言には絶対反対である。

 

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