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〜体重や身長って個人情報じゃないんですか?〜


 ご無沙汰しております。 (略) 突然その三年女子が 「これって担任の先生も見るんですよね!」 って言いながら泣き始めたんです。 (略) 初めは何のことかわからなかったのですが、 それが体重の記録のことだったんです。 (略) 要するに、 大好きな若い担任の先生に自分の体重がわかってしまうのがいやだ、 と言うんです。 (略) わたしも、 だからって担任の先生に 「見ないでください」 って言うのも変だし。 (略) 次の日、 母親がきて 「先生、 体重や身長というのは個人情報じやないんですか?それをどうして学校は強制的に測って記録を残したりできるんですか?」 (略) 強制かなぁ、 という感じもするんですが、 いままでそんなこと言われたことないんで、 どう答えていいかわからなくて、 「私に言われても困ります」 って言ったら 「無責任!」 て言われちゃいました。 これって無理難題要求では? (略) 何かいい知恵があれば教えてほしいのですが。
                                               (愛知県・中学校養護教諭・38歳)

 なるほど、 面白いケースですね。 というのも、 これは一見すると 「無理難題要求」 のようにも見えますが、 けっこう学校とか教育というものの本質を衝いているのではないかと思います。 というのも、 身体測定というのは、 近代になってから始められたもので、 国家と教育という面から考えるととっても興味深いものを含みもっているからです。
 現在、 学校で行われている身体測定のことを、 戦前、 戦中時には 「身体検査」 と呼んでいました。 そしてその発想のおおもとは 「徴兵検査」 であるといわれています。 徴兵検査は、 「国」 という概念のなかった時代 (近代化以前の 「くに」 は、 相模や三河などの地方を表すことばで、 「日本国家」 を表してはいませんでした) から、 新たに国民国家として欧米列強に伍していくための軍隊をどうつくるかが問われた際、 「あるべき兵士像」 の一つの基準としてつくられたものと言えます。 その学校版が 「身体検査」 であったのでしょう。 これは 「一旦緩急アレハ義勇公二奉シ」 (教育勅語) るための国による身体管理と言えます。 一方、 天皇を頂点とする神道を軸とした徹底した洗脳教育=臣民化教育は、 国による心の管理ですね。
 近代国家を急造するために、 明治政府はこの二つを軸に国民管理を始めたわけです。 この管理が70年ほど続いたあと、 戦争が終わります。 もちろん徴兵検査はなくなりました。 しかし、 身体検査は、 身体測定・健康診断と名前を変え、 引き続き学校の中で行われてきました。
 身体測定・健康診断を義務づけている法律は、 学校保健法です。 そしてその細目については、 学校保健法施行令や学校保健法施行規則で決められています。 その目的は何かというと、 「・・・生徒、 学生、 及び幼児並びに職員の健康の保持増進を図り、 もって学校教育の円滑な実施とその成果の確保に資する・・・」 とされています。 学校において測定や診断を行い、 何か問題がある場合は、 学校が受診を要請することになっています。
 しかし、 ここに問題はないでしょうか。 まず、 健康そのものについての考え方は、 本来個人のものなのに、 その時代の 「健康観」 のようなものが前提となってしまうことです。 たとえば、 虫歯は歯磨きを励行すれば防げるという大前提から、 歯牙検査 (これもすごい言い方) を行い、 受診勧告を行います。 しかし、 実際にはどんなに歯磨きをしても虫歯になる人はなるし、 ならない人は歯磨きなどしなくてもならないのです。 つまり、 遺伝的な傾向が強いと考えられますが、 いったん歯磨きを励行した以上、 今更歯は磨いても磨かなくても同じ、 とは言えませんし、 いまだにクラスごとに歯磨き競争などをしている学校もあるようです。 いろいろな意味で 「歯はほどほどに磨く」 のが大切だと、 私は思うのですが。
 これは、 成人病を 「生活習慣病」 と言い換え、 まるで個人の生活習慣がきちんとしていないから病気にかかるのだ、 というのに似ています。 メタボリック症候群なども同様で、 健康に関することに国や厚生労働省が口を出すのは、 保健医療の問題など国策と切っても切れないつながりがあるからです。 最近では、 「食育」 という気持ち悪い言葉がはやっています。 早寝、 早起き、 朝ご飯をしっかりしていれば、 アタマもよくなるというのです。 これこそ 「人が生きて生活している」 ということへの想像力の圧倒的な欠如!だと私は思います。 さて、 身体や心について、 国 (公け) がどこまで口を出していいのか。 私は身体は個人のもの。 戦後の貧しい時期においては、 学校が代わりに健康診断をすることで、 最低限の健康を守るという役目を果たしたことも事実ですが、 これほど個人情報云々が叫ばれる時代に個人の大量の情報を12年間にわたって学校が継続的に管理する必要はないだろうと思います。 今学校では、 教員の自宅の住所や電話番号を生徒や保護者に伝えないことがふつうになってきています。 また、 逆に教員が、 保護者の職業を知らないのも当たり前になってきています。 そんな時代に、 一人ひとりを体重計に乗せたり、 「あご引いて」 なんていいながら身長を測るなんて、 学校でする必要はないと思います。 多くの家庭で身長計はなくても体重計ぐらいは置いてあるのですから。 実際、 学校で調べた体重と身長が今まで何かの役に立ったこと、 ありますか。 私は、 現在行われている身体測定・健康診断もやはり、 戦前戦中の徴兵検査同様、 国家が個人を管理するシステムであることは否めないと思います。 ですから、 その母親の意見に、 私は賛成です。
 とはいえ、 法律で定められていることですから、 来年からウチはやめるわ、 というわけにはいかないでしょう。 あなたが、 なるほどなぁとお思いでしたら、 せめて回数を減らすとかから始めていくことではないでしょうか。
                                                                         (赤田 圭亮)

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