●ホーム●ニュース●Q&A●08.01
横校労ニュース
トピックス
●読者Q&A
〜 臨時的任用職員の体罰から何がみえますか?〜

 ご無沙汰しています。 (略) いろいろありますが、 どうにか続けています。 (略) 来年は六年生をもつことになるかもしれません。 (略) 話は変わりますが、 先生も読まれたかもしれませんが、 小さな記事だったので見落とされているかも、 と思い同封します。 (略) どうしてかこの記事が気になって仕方ありません。 体罰がいけないなんて、 今じゃ当たり前のことなのにねえ、 と先輩の先生はいうのですが、 私はすっきりそう思えないんですね。 わかるっていうんじゃないのですが。 (略) 先生だったらどう思うのか聞いてみたくて手紙を書きました。 暇なときでいいので、 ご意見聞かせてください。 もしかしてあのQ&Aコーナーで書いてもらえたらうれしいです。 (略)
                                                            (東京都・小学校教員・26歳)

 そういうふうにいつも引っかかりをもつところが、 昔からあなたのおもしろいところでしたね。 短い記事ですが、 私もこの記事、 違和感を感じました。 この先生、 年齢も私と同じだしね。 まず記事からわかる経過をまとめてみましょう。
 横浜北部の小学校、 五年生担任の女性教諭、 学校の始まった一月七日に産休代替で赴任した臨時的任用教員。 八日の授業で大根の観察に行く途中、 一部児童が校庭で遊び始めて集合が遅れたため 「みんなにも責任がある」 と、 児童のほおを両手で挟むようにしてたたいた。 午後に保護者が学校に連絡。 「連帯責任として全員をたたいてしまった。 騒がしかったので早く立て直したいという焦りがあった」 (教諭談話) 「児童と保護者に大変申し訳ない。 教諭全体で体罰についての研修をし、 再発防止の徹底を図りたい」 (校長談話)
 確かにあなたのところの先輩教員が言うように 「体罰がいけないなんて今じゃ当たり前」 だし、 しつこく研修もしているよね。 私もこれだけ読むと、 どうしてそんなことまでしなければいけなかったのかな、 と思います。 赴任して二日目、 子どもの顔と名前も一致していないのに、 全員一律にほおをたたく、 というのはいくら何でも乱暴だな、 ということですね。 それでもコトは起こってしまいました。
 ここで大事なのは 「体罰は禁止されてるのにやっちゃったんだから、 この先生がおかしい」 で終わってしまうことです。 その一番のいい例が校長談話です。 市教委が例文を校長に渡しているんじゃないかと思えるほどのお手本コメントですね。 このコメントが上手なのは 「教諭全体で」 と言って、 まるで他の先生たちにも連帯責任があるような言い方をしていることです。 体罰を容認するような土壌があった、 とでもいうのでしょうか。 でも赴任して二日目の先生には土壌も何も。 要するに校長は、 事態を薄めているんですね。 もちろん校長自身の責任にも言及しません。 いろいろきいたふうなことを言いますが、 結局のところは 「やった教員が悪い」 と言っているに過ぎません。
 この先生の気持ちになって事態を考えてみましょう。 ある日、 つくられて九ヶ月が経つクラスに突然、 学級担任として赴任する。 五四歳での臨任といえば教職経験は少なからずあるでしょう。 しかしそれでも初見の五年生というのはけっこう重い。 一日目、 子どもたちは素直に彼女を迎えてくれただろうか。 それまでのクラス運営がうまくいっていれば、 前担任への思いがあるから、 そうすんなりとは子どもたちは気持ちを開かない。 うまくいっていなかったとしても、 この年齢の子どもたちがすぐに新しい先生になついていくとは思えない。 どちらにしても、 厳しい出発だったろうと想像するしかありません。
 二日目、 教室から出て大根の成長具合いを見に行く授業。 指示を聞かずに遊び始める児童が数人。 注意したくても名前がわからない。 そのうえ二日目でもう子どもたちがバラバラでは、 子どもたちにしめしがつかないし、 管理職や同僚から 「できない教員」 と思われても困る。 何しろ三ヶ月勝負なんだから。 この際、 全員にびしっと私の気持ちを伝えておかなければと言葉に出すも、 子どもたちは聞こうとしない。 いらっとして大きい声を出す。 「全員、 並びなさい!クラスがまとまらないのは一人ひとりの責任でしょ!」 と言ったかどうか。 そして・・・。
 この先生の教員としての資質云々を言っても仕方がない、 と私は思います。 もしかしたら同じ立場だったら私もやってしまうかもしれません。 これについては彼女を選んだ市教委と校長に責任があると私は思います。 どういう責任かというと、 彼女を採用しただけで、 それ以上何もしなかったという責任です。
 新採用教員には、 これでもかと言うほど研修漬けにしながら、 同じ年齢の臨任には何もしないというのが現在のシステム。 四月の学級編成後に赴任する臨任と、 九ヶ月経ったクラスに赴任する臨任。 今では、 学級崩壊クラスを校内で手当てできず、 そのまま臨任に任す学校もあるといいます。 臨任・非常勤不足の今、 免許をもっていさえすれば、 市教委はすぐに学校へ紹介します。 校長もとにかく穴を埋めなければと、 五年だろうが六年だろうがつけてしまいます。 年度途中ですから、 四月には赴任教員に対して行う最低限の研修すらしません。 学校がある地域の特性や児童や保護者の傾向、 一人ひとりの児童についての情報提供、 そしてこうした時期に学担が変わるしんどさとその際の手だてなど、 そんなことを校長は研修としてきちんとやったのでしょうか。 保護者、 児童に対して、 新しい先生を迎えるためのていねいな準備をしたのでしょうか。
 私には、 彼女の孤独と焦りがわかるような気がします。 彼女は今、 たぶん悔やんでも悔やみきれない思いでいるでしょう。 でもこの問題は、 一臨任の体罰問題ではありません。 明らかに学校の非正規労働者の問題ですし、 ひいては現在この国の労働をめぐる大きな問題の―つの表象であると思います。 市教委、 管理職は、 個人の責任に矮小化することなく、 本来とるべき責任を取ってほしいものだ、 と私は考えます。
 紙数が尽きました。 あなたが感じた引っかかりと私のとは少し似ていましたね。 職場の仲間への想像力、 それをなくしたら教員はやっていけないな、 と私は思います。
                                                                      (赤田 圭亮)
©1999-2005 横浜学校労働者組合
本サイトの内容を無断で他に転載,複写する事を禁じます。