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書 評 『僕たちの好きだった革命』 (鴻上尚史 著)
   「俺たちは、 正しく戦って、 正しく負けないとだめなんだ」
  「あの時代」 はなんだったのか、 「今の時代」 はなんなのか、 「生きる」 とはどういうことなのか。 「負ける」 とはどういうことなのか。 「大人」 とはなんなのか。 「若者」 とはなんなのか。 「戦う」 とはどういうことなのか。 「逃げる」 とはどういうことなのか。

  『僕たちの好きだった革命』 は昨春、 新宿・シアターアプルで上演された。 映画 「TRICK」 などの監督、 堤幸彦が長く暖めていた企画を、 演出家の鴻上尚史が舞台化したのである。 その案内が掲載されたHPに鴻上が書いたのが先の言葉。 こう問いながら一瞬を駆け抜けた若者を描いた芝居は、 一年後に同名の単行本となった。

 一九六九年一一月、 高校二年生の山崎義孝は、 拓明 (たくめい) 高校校庭をバリケートで固め、 自主企画自主運営の文化祭開始を宣言する高校全共闘の仲間たちと共にいた。 そこへ突入してきた機動隊員。 圧倒的な力で排除される高校生たち。 朝礼台でアジ演説をする高三のリーダー兵藤明は機動隊員の警棒で腹部を突かれ、 引きずり降ろされた。 高二の橋本文香が角材を振り回しながら叫ぶ。 「山崎君、 シュプレヒコールよ」。 機動隊員に引きずられていく兵藤も叫ぶ。 「山崎、 アジ演説を」。 仲間たちが次々殴り倒される中、 周囲の声に押されマイクを持つ山崎。 その山崎の眉間を、 機動隊員の放ったガス弾が直撃する。
 一九九九年七月、 山崎は三〇年の眠りから突如目覚める。 両親は既に亡く、 親族は叔母が一人いるだけ。 長い眠りから目覚めた山崎は彼女に頼んで、 高校生活を続けるべく拓明高校に復学する。
 しかし三〇年後の高校生に、 すぐに 「諸君、 クラス討論だ!」 と叫ぶ四七歳の同級生は薄気味悪い。 「むかつく」 と言えば 「胃でも悪いのか?」 と質問され、 「チョーむかつく」 と言えば 「胃ではなく腸なのか?」 と心配げな顔をする山崎は、 理解不能の存在であった。
 どこかで見たことのある顔の同級生、 小野未来。 その未来たちが計画していた文化祭でのライブコンサートは急に不許可となる。 山崎の前に顔を見せない拓明高校の教頭の影がちらつく中、 山崎を中心に、 拓明高校の生徒たちは、 一一月の文化祭に向かって動いていく。
 
 鴻上には、 一九六九年をモチーフとした小説 『ヘルメットをかぶった君に会いたい』 (集英社) が既にある。 あの時代の若者たちへの共感なのかオマージュなのか、 寄せる思いが、 当時小学生だった彼には一段と強いのだろう。 その思いは、 主張や運動を政治活動の一章としてまとめるのではなく、 より大きな物語として結実させたいという願いにつながっているのではないか。 生きることへの真摯な、 それゆえ大人を不安にさせるむき出しの問いかけが、 若者たちに伝播し、 津波のように押し寄せ広がる幻想を誰もが共有しかけた時代。 そういう時代が確かにあったのだ。
 幻想は 「一九六九年」 と名付けられて、 今、 鴻上尚史の手で形あるものに変えられようとしている。
    (山本 理)
  (角川学芸出版/一七八五円)

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