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横浜市教委が特定一私企業とタイアップ? ありかよ??

 (略) そういえば、 この間変な冊子が副校長の机の上にあったので 「何ですか、 これ?」 と訊いてみたら、 「いやぁ、 これ新入生保護者説明会で配れって市教委から送ってきたんだよ。 ひどいモンだよ、 これ。」 (略) よく見るとウチの上の子の進研ゼミの付録そっくり。 ブルーの表紙というあたりは横浜を意識しているのでしょうけど。 最後のページには、 葉書が付いていて、 宛先は進研ゼミ 「中学準備冊子プレゼント」 係とあります。 (略) こんなの、 ありですか。 (略) 赤田さんの意見をお聞かせください。
    (市内・中学校教員・39歳)

見ました。 タイトルは 「〜2009年 新中学1年生のお子さんをお持ちの保護者の方へ〜はまっ子家庭学習パーフェクトガイド中学生版」。 ということは、 新しく小学校一年に入学する子をもつ保護者対象にも小学校版が配られているというわけです。 おたくの副校長がどんなつもりで 「ひどいモンだよ」 と言ったのかわかりませんが、 ほんとうにひどい代物ですね、 これは。 全編32ページ、 まずは、 中身をしっかりおさえておきましょう。
 表紙のタイトルバックはブルーで、 みなとみらい地区らしい影絵の上に虹が架かり、 「!」 「?」 が浮いています。 とりあえず横浜らしさをアピールというところ。 下部左側には 「中学校でさらに力を伸ばすために家庭でできることが満載です!」 とあります。
 表紙裏にはこの冊子の趣旨。、 中学は 「不安定な心を抱えた時期」 ですが、 その中で 「学力を伸ばしていくためには家庭での過ごし方が大切」 なので、 お子さまが 「真っ直ぐに羽ばたいていくために、 横浜市教育委員会とベネッセコーポレーションから、 この一冊をお届けします。」 とあります。 これは横浜市教委が一私企業のベネッセといっしょにつくった冊子なんですね。 裏表紙には、 発行所として 「(株) ベネッセコーポレーション」 とあって岡山の住所が書いてあります。 現在の代表取締役会長兼CEOは創業家の福武聰一郎氏。 地方の通信教育 (進研ゼミ) 中心の出版社福武書店が90年代以降、 教育・語学・生活・介護を統合する総合産業として発展してきたのが、 現在のベネッセです。 そうして視線を右にずらすと、 「横浜市広報印刷物登録第203040号」 とありますが、 ベネッセの広告を32ページのうち4ページをいれることで1500万円を出させて、 横浜市教委は1円も持ち出すことなく、 数万人の小一、 中一の保護者にこの冊子を届けるという離れ技をおこなったのです。 市教委は、 一民間企業と提携して自前の予算を使わずに広報活動を可能にしているわけです。 市バスにも広告が入る時代、 公器を上手に使ってということかもしれませんが、 しかしこのタッグ、 どっちがいい思いをしているかといえば、 明らかにベネッセです。 ベネッセの対費用効果は10倍以上でしょう。 ひさしを貸して母屋をとられているのは市教委。 「家賃を払うんだから、 ここで私 (ベネッセ) がどんな商売をしても文句言わないでね。 それよりかアンタ (市教委) も、 ぼーっとしていないで手伝いなさいよ」 といったところでしょうか。 中身に入りましょう。
 第一部は、 「中学生ってどういう感じ」 ということで、 部活動、 家庭学習、 睡眠時間、 授業と学習、 苦手教科などについてベネッセ教育開発センターのもっている数字を使って中学生活は、 部活動に時間をとられて勉強どころでないくらいひどく忙しい、 つまずかないためには中一前半が大事、 部活と勉強に忙しいのだから、 塾になど行っている暇はありませんよ、 というメッセージ。 暗にというよりけっこうあざとく進研ゼミへと誘導しています。 次に親、 友人、 自分との関係を先輩保護者の体験談をおりまぜて整理、 最後に 「勉強との関係」 をまとめています。 第2部は、 「中学生スタートまでに家庭で身につけておきたい力」 として、 大阪教育大学 (横浜国立大ではありません) の田中教授の 「中学校で羽ばたくための5つのポイント」 の紹介。 @タイムマネジメント A読書 B親子の語らい C自立性 D食生活 をあげています。 間違いとまでは言いませんが、 現場感覚からすればずいぶんとズレた話だなというのが印象。 次に 「中学でぐんと伸びる子」 になるための学習ポイント・ガイダンス。 なぜか主要?五科目しかありません。 そして第三部。 「家庭学習のヒント」。 各学年でどんな学習をすればいいのか、 がまとめられていますが、 あまり中身はありません。 それより各学年ページの左上には学習時間の目安として、 中一、 中二は90分、 中三は120分とあります。 何を根拠に?一読して、 口当たりはいいけれど、 初めての中一の子どもを持つ親にとっては、 いやな感じです。 文部科学省が出している 「家庭教育ノート」 にとっても似ていて、 あるべき姿を一般的に示すことで、 そうではない家庭の不安を煽るというやりかた、 その学習版という印象が強いですね。
 さて、 これで本編は終わり。 あとの4ページと三分の一は広告。 「進研ゼミ中学講座は、 中学生のよりよい家庭学習を応援します!」 「だから、 志望合格まで、 自信を持って進んでいけます」。 あなたが書いているように、 32ページには、 「中学準備冊子プレゼント」 の葉書まで付いていますし、 裏表紙下にはこれも広告 「10日でできる!日めくりドリル」 「中学まるわかりBOOK」 を、 横浜市在住の保護者全員にプレゼントとあります。 その上に、 子育て相談窓口として教育総合相談センターや区の福祉保健センター、 チャイルドラインと並んで同じ枠の中にベネッセコーポレーション教育相談サイトが載っています。
 要するに、 中学生になる不安を市教委とともにやさしく?煽り、 困っているなら塾へ行くより 「進研ゼミ」 に入りなさいよ、 ということ。 塾からの抗議はないのでしょうか。 応募葉書の表面下にはこうあります。 「この冊子をお読みになった感想をひとつお選びください。 1:進研ゼミへの興味が深まった 2:進研ゼミへ入会を検討するようになった 3:特に意識の変化はない」。 ベネッセのこれにかけた本気度?が伝わってきます。 なにしろ 「この冊子」 を読んで 「進研ゼミ」 をやる気になったかどうかが、 横浜市教委の協力でわかるのだからすごい。 こうまでして企業戦略に乗せられながら、 横浜市教委の取り分は何でしょうか。 それはたとえば横浜 「ケータイ・ネット」 五カ条とかキャリア教育の推進、 さらに食育とからめた学力向上論が冊子の端々で展開されていること。 ほとんどが、 文部科学省がらみの政策。 どこの部署が協力しているのか、 言わずもがな。 以上、 紹介です。
 最後にひとこと。 行政や企業が自分の思惑で好き勝手にやっている、 というのが、 いちばんの印象です。 こんなやり方、 私はおかしいと思います。 子どもや保護者のいちばん近くで日々過ごしている私たち教員は、 新入生の不安や勉強への取り組み方について、 その地域やその子どもにあった独自のノウハウをもって対応しています。 そんな私たちの頭越しに企業と組んでよけいなことをしてほしくありません。 私たちは、 中一の家庭学習時間の目安は90分、 なんてバカなことは言いいません。 朝ご飯をしっかり食べている子は成績もよい、 なんて夜の勤めの母親に言えるはずもありません。 私たちは、 社会というモノを少しは知っていますから。 どんなに勉強ができなくても、 笑顔で学校に通ってくる生徒はどこの学校にもいます。 お昼の弁当を今か今かとまっている生徒も、 友達と会えるのを最上の楽しみにしている生徒もいます。 いろんな子どもがいて学校が成り立っています。 フツーの教員はそのことを知っているから、 アドバイスで大言壮語を吐きません。 もっとゆったりと気遣いをもちながら親子に対しています。
 最後に進研ゼミパーフェクトガイド!。 進研ゼミをやっている生徒は、 やっていない生徒より成績がよいというデータがありますが、 それは、 成績のよい生徒が進研ゼミをやっているのであって、 だれもが進研ゼミをやると成績が上がるということではありません。 返信をして来る子どもは2割程度だそうです。 だから商売として成り立っているんですね。
                                                             (赤田 圭亮)
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