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〜検温チェックってほんとうに何かの役に立っているのでしょうか?〜

 メールですみません。 ご無沙汰しています。 (略) 検温チェックのことです。 突然、 あしたから全員、 家で検温!にびっくりしました。 (略) 大変なことになりました。 用紙をもってこない生徒が、 毎日、 10人以上、 多いときには半分近くの生徒が忘れます。 クラスに一本体温計が配られていますが、 例によって奪い合い、 挙げ句に体温計が紛失してしまう始末。 授業中に保健室に計りに行ってはトラブル、 そのうえ体温を適当に記入する。 38度、 40度、 43度?で生徒指導は増えるばかりです。 (略) こんなにまでしてやっているこのやり方って、 ほんとうに何かの役に立っているんですか。
    (港南区・中学校教員)

 この原稿を書いているのは5月17日ですが、 きのう16日には、 海外渡航歴のない神戸の高校生が新型インフルエンザに感染していることが報道され、 今日は感染者が21人になったと報じられています (今号が発行されるころには、 10倍ぐらいになっているでしょうか)。 WHO (世界保健機関) の警戒レベル引き上げを受けて、 日本政府が水際作戦と銘打って空港での検疫が始まったのが、 4月28日。 最初に新型インフルエンザの感染がメキシコで確認されたのが3月9日ですから、 約50日の間にウイルスが何らかのかたちで国内に入ってきたと考えられます。 専門家は、 「もともと水際で阻止しきれるものではなく、 三月、 四月のうちに日本に入っていたと考えるのが普通。 それなりに感染者もいたが、 既に治っている、 という状況だろう」 (外岡立人元小樽市保健所所長・東京新聞)。 専門家は、 バランスの良い対策を、 と何度も繰り返しているが、 政治家は違う。 舛添厚労相などはしゃぎすぎの感ありありです。 横浜の対応も、 短絡的かつ政治的なものだと、 私は考えています。 それは二つのことから言えます。
 まずひとつは、 今回の家庭での検温チェックを学校で集約するという方法ですが、 はたして何らかの有効性があるのでしょうか。 37度を超えた生徒がいた場合、 養護教諭に報告を、 なんて言っていますが、 平熱は児童・生徒一人ひとりそれぞれなわけで、 36・0度でも微熱の生徒はいます。 また、 高熱を発していれば、 多くの児童・生徒は欠席するわけですから、 学校でのチェックはほんのわずかな熱の変化をみることになります。 40人近くの生徒の平熱も報告させるのでしょうか。 それと当日の体温のわずかな違いをチェックして、 何かわかるのでしょうか。 有効性があるとすれば、 子どもの体温の変化に関心をもたない親に対する意識づけぐらいでしょうか。
  「家に体温計がない」 という児童・生徒が少なからずいることを市教委の担当者は、 知っているのでしょうか。 朝、 子どもが熱を測る前に出勤してしまう親もいます。 登校時に寝ている保護者もいます。 生活がいい加減なわけではありません。 「早寝早起き朝ご飯」 とはかけ離れた労働実態が、 この国にはたくさんあります。 また、 あなたが書いているように、 「明日から朝、 検温して、 親にはんこを押してもらってもってくるように」 と言って何の混乱もなく、 ほとんどの児童・生徒がプリントもってくる、 忘れた児童・生徒はそっと検温して担任に報告……なんて学校は横浜514校のうちどれだけあるでしょうか。 生活のリズムが乱れがちな生徒が多い学校では、 教員はそれに応じたノウハウをもっています。 体調がおかしくて、 ついついイレギュラーな行動に走ってしまう生徒や、 毎日のように寝不足のまま登校する生徒、 いろいろな生徒の状況に応じて声をかけたり、 休ませたり、 親と連絡を取ったりしているのが私たちの日々の仕事です。 形式的に体温を紙に書かせてチェックするなどというやり方よりも、 はるかに細やかな対応をしているのが現場だと私は考えています。 「もう治っている人もいるはず」 という状態の中で、 微温を測っているとしたら、 本格的な冬のインフルエンザの季節到来の時には、 寝る前と朝と2回測って提出!などということになりかねません。
 何かやらないと世間にアピールできない、 と考えている政治家、 紙一枚で、 現場が動くと考えている官僚。 二つめはそのことです。 今回も今までの政策発表と同様、 横浜市は検温チェックをします!という新聞報道と、 現場への通知にほとんど時差はありませんでした。 私が朝自宅で新聞を読んで出勤、 職員室に入ってすぐに副校長に 「先生、 検温チェックは……」 と言ったら、 「今つくっています」 と生徒に渡す用紙を作成中でした。
 誰の思いつきでしょうか。 「これで (他自治体を) 一歩抜けるぞ!」 と考えた人がいたのでしょう。 いいですか。 良識的で常識的な行政とは、 単に目立ちたがったり、 紙一枚で人を乱暴に動かそうとはしないものです。 情報を正確に流し、 取るべき対応が遺漏なくできるように市民を援助することが行政のすべきことです。
 マスクが必要だと判断したら、 マスクの備蓄を、 検温が重要だと判断したら体温計の確保を。 子どもの体調が悪いが、 仕事も休むわけにはいかない、 という親に行政が取れる必要な対応は?熱が上がって帰宅を促された子どもの居場所は?新型インフルエンザが、 ほんとうに危険なものならば、 学校での検温チェックなどより、 やることはたくさんあるはずです。
 すでに発症して治っている人もいる状況の中で、 もし学校でのチェックで感染者が見つかったとしたら、 どんなことになるでしょうか。 まるで何かの犯人のような扱いを受けそうで、 心配です。 横浜市内の某Y学園の校長が、 新型インフルエンザ感染の疑いが晴れたときに 「職員みんなでバンザイをしました」 と言っていましたが、 国全体でもう少し冷静な対応は取れないものでしょうか。 「申し訳ありませんでした」 と涙ながらに謝ったS学園の校長先生、 アナタが謝ると生徒はもっと辛い立場になりますヨ。
                                                                    (赤田 圭亮)
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