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教科書採択一地区化を許さない

 ―― 自由社版歴史教科書問題 ――
 来年度から横浜市内十八区中八区の中学校で使用することになった自由社版歴史教科書について、 十一月六日の市議会、 こども青少年・教育委員会の質疑の中で、 田村教育長は 「もっと激しいリアクションを想定していた」 と語ったという (朝日新聞神奈川版 11\7)。 
 さらにこの教科書について 「検定に合格したもの。 適切な手続きで採択した」 と繰り返した (同)。
 激しいリアクションを予め想定するような採択変更をした理由について、 複数の教育委員は 「教育委員会の権限と責任」 を強調した。 
右派請願の主張に沿った
「手続き」 
 横浜では、 これまでの歴史教育を自虐史観とする 「新しい教科書をつくる会」 系の団体が 〇八年十一月以来、 教育委員会に教科書採択変更についての 「請願」 を繰り返していた。 その内容は、 一、 教科書採択にあたっては、 「教育委員会の権限と責任」 において採択すること。 二、 改悪教育基本法・学習指導要領の趣旨に照らして、 最もふさわしい教科書を採択することというものである。 一については、 具体的には (教科書取り扱い審議会などの) 調査資料や現場教職員の声を排除し、 教育委員個人の判断で選定せよ、 教育委員の無記名投票に変えよということである。 二については、 選定を教科によって濃淡をつけ国語・社会・家庭などは重点的に目を通し、 愛国心に基づく観点で評価せよということである。 
 これらの請願内容を、 横浜市教委は実質全て受け入れることで自由社教科書を採択したことになる。 
制度上の問題点
 本紙九月号でも触れたように、 中田宏横浜前市長が選任した今田忠彦教育委員長は、 四年前の教科書採択時には、 教育委員として自由社版の姉妹本である扶桑社を一人だけ強く推した人物であり、 その後今田委員を除いて他の五人の教育委員は総入れ替えになった。 教育委員会の中立性、 公正性を測るものはその具体的行動においてでしかない。 しかし 「教育委員会の権限と責任」 が与えられれば何でも可能であることを、 今回の採択は示している。 権限つまり 「力」 をもちさえすれば、 好きに出来てしまうのが現行の教育委員会制度でもあり、 その帰結が今回の採択である。 
採択地区の一区統合問題
 自由社版歴史教科書採択と合わせるかのように、 横浜市教委は現行十八採択区 (行政区と同一) を一地区化する動きを展開した。 六月に県教委へ一地区化の要望を提出し、 十月十五日神奈川県教委は反対意見が続出したものの多数決で認められた。 その変更理由は、 
○市内で共通の教科書を用いることにより、 「横浜型小中一貫教育」 のカリキュラムに基づく学習を円滑に進めることができる。 異なる教科書を使用していることによる児童生徒の学習や教員の指導の難しさがなくなり、 より一層の充実が図られる。 
○共通の教科書を用いることにより、 学習順序と題材が同じになり、 市内での転出入の際、 児童生徒の負担が少なくなる。 
○共通の教科書を用いることにより、 取り上げる題材が同じとなり、 その題材を用いた指導を他校においても授業研究として深めることができ、 授業改善に役立てることができる。
というものである。 
 県教委の各委員をして、 これら三点は一地区化する理由として 「つたない」 「腑に落ちない」 「もう少しまともな理由を出してほしい」 と言わしめるものでしかなかったほどのお粗末な理由である。 
 一地区化により、 地区内需要数は全国最多、 都道府県規模で見ても、 小学生数で十一番目、 中学校数では十二番目に相当するマンモス採択地区が出現することになる。 市教委が繰り返し強調する 「関連法規・文科省通知・県教委の指導に基づき、 公正適正の採択を行う」 ことであるならば、 重要な関連法規である教科書無償措置法の立法趣旨も尊重されなければならない。 
第十六条にある特例として大規模採択地区が、 他の採択地区と著しく均衡を失することがない適正規模を逸脱することがないようにするべきである。 また、 文科省通知や行政改革委員会の 「教科書採択制度の改善」 でも採択地区の小規模化・細分が示されている。 マンモス一地区化は、 まさにこれらに反するものであり、 逆行している。 
 県教委は横浜については一地区化を、 愛甲での採択地区細分化には賛成というダブルスタンダードの混乱を呈しての承認である。 
 今回の自由社版歴史教科書採択と市内一採択地区化の動きは連動しており、 扶桑社・自由社系の歴史教科書が二年後市内全域に 「円滑に」 採択されるために打たれた布石であることは間違いない。 
教科書を
 どう選びどう使うか
 教科書の検定制度の問題は大きいが、 主たる教材である教科書が出された時、 採択制度に関して現場の採択権が剥奪されていき現場の声が届かなくなった現在の状態をどうしていくべきか。 
 一九六二年の教科書無償法成立と同時に各学校採択から広域採択となり、 採択権は原則市町村に移った。 市町村教委は採択審議会からの答申の中で学校票方式が多くの地域で採用されていた。 しかし、 冒頭にも触れたように 「つくる会」 系の 「教科書選択正常化」 の動きに沿うようにして、 学校現場からの声は無視され、 教育委員会の 「権限と責任」 の名の下に今回の横浜のような採択がなされるところも出てきた。 
 本来、 教科書は現場の学校・教員が決めるものである。 その声が反映されない中でおろされてきた教科書を使わざるをえない現実に今直面しようとしている。 拒否できないとするならば、 教材としてどう使うかである。 反面教師として使うこともできようが、 多忙な学校現場の日常の中では困難も多いが、 今こそ自主教材・副読本づくりの意味が現実味を帯びてきたのではないか。
制度改革とともに
 今回の採択後、 危機感を持つ市民グループが結集し横浜教科書採択連絡会として採択のやり直しや教育長・教育委員長の辞任を求める運動も開始された。 各地域でいろいろなグループが動き始めている。 われわれ横校労も集会や他団体との連携を通じて教科書採択問題に根気強く取り組んでいく。 
(朝倉 賢司)                                  

 

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