【文科省交渉】給特法を廃止し、労基法を適用せよ!

全国交流

8月24日(月)、参議院議員会館にて全学労組は文科省交渉を行った。今回も福島瑞穂参議院議員事務所に協力を仰いで交渉の場を調整し、横校労からは7名、全学労組としては25名ほどが集結した。

事前に申し入れ35項目全てに対して文書で回答が送られてきたのは初めて。コロナ禍で交渉自体が持てない可能性があったためでもあるが異例の対応である。

交渉は1時間、重点項目に基づいて交渉が進められた。ここでは主に項目1の給特法について、項目5の1年単位の変形労働時間制についての交渉を取り上げる。

給特法についての申し入れ項目

1.「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)は貴職もこの間の交渉で回答してきたとおり制定当時の労働実態との 大きな変化に伴いもはや教員のみを特殊な労働関係であると規定することができない現状に至っていることに鑑み、これを廃止し、教員に対し労働基準法(労基法)を全面的に適用すること。

「給特法」で想定されていない慢性的・恒常的に存在している時間外労働に対して は、労基法第37条[時間外、休日及び深夜の割増賃金]による時間外割増賃金が支給 されるものであることを明確にすること。

(ア)2019年11月22日の衆議院厚生労働委員会で、坂口卓厚労省労働基準局長が 「(限定4項目以外の超過勤務については)労基法36条は地方公務員法上適用外とされていない」と発言しているが、文科省としてこの場で「限定4項目以外は36協定が締結できる」ことを明確に確認されたい。

文科省回答(以下、文)

「厚労省の見解『(教員に対しても)36協定は除外されていない』事はその通りである。限定4項目以外は締結できるという趣旨は明確でないが、教員の時間外勤務は、給特法の範囲内において命じられる。」

全学労組の意見(以下、全)

「限定4項目以外の時間外勤務は36協定の適用と考えられるが」

「4項目以外は命じられない。36協定は時間外勤務を命じる場合によるもの」

「いちいち命令があるわけはない。実質黙示の命令で働いている。それをやらないと学校は回っていかない。企業が時間外勤務に対して残業代を出しているように、同じようにすべきと要求している」

「給特法のあり方については勤務実態調査に基づいて検討する」

「大昔から言っている文科省の回答だ。昨年の働き方の議論の中で、実際には4項目以外の時間外勤務が8割以上しめることが部会の中でも確認されている。命じる対象ではない超過勤務とは言えなくなって、”時間外在校等時間”というのを作って労働時間管理の中に入れるということになった。議論が進んできた中で、これまでと同じ回答をされても困る。労基法上の超過勤務と時間外在校等時間との違いを明確にせよ」

「公務であることに変わりないが、給特法の仕組みでは自発的業務となる。内外包括して調整額4%を支給している・・」

「それが成立しなくなっている。自発的な業務というが、教員が自分の判断で勝手に仕事をしていいなんてあり得ない。現場は全て校長の命令下でやっているだろう」

「給特法にこだわるなら時間外勤務はさせないということにこだわるべきだ。上限月45時間年360時間、給特法からしたら違法だ。現実は違う。そこをふまえて議論せよ」

「その第一歩として働く時間を削減しようと給特法のもとで”時間外在校等時間”という概念を作った。給特法自体も検討していこうとしている」

「”時間外在校等時間”は労働時間では無いのか。”黙示の指示により労働業務に従事する時間は労働時間にあたる”とガイドラインに書いてある」

「労基法上の労働とは違う」

「だから労基法にもない”時間外在校等時間”という新しい言葉を作っちゃったんだよね。それが間違いだ」

時間外在校等時間は労働ではない?

厚労省答弁の「36協定は除外されていない」は認めるが、そもそも給特法によって限定4項目以外の時間外労働は命じられないという従来の回答。

すなわち、36協定は命令された業務を対象とするのであり、よって我々の時間外勤務(文科省のいう”時間外在校等時間”)は労働とは言えないという。

 これだけ教員の働き方が注目されている中、これだけその時間外勤務で学校が成り立っているかという現状が議論される中であくまでこの姿勢。

”時間外在校等時間”という謎の概念がいかに苦しい言い訳か明らかである。

一年単位の変形労働時間制についての申し入れ

5.1年を単位とした変形労働時間制の導入に際して、各自治体の条例制定を強制しないこと。

(ウ)このような状況下では2021年度からの導入に向けた条例制定よりもコロナ対 策や学級定数改善が優先されるべきである。直ちに条例制定の停止、2021年度導入の 凍結を指示せよ。

「法律の施行は来年の4月1日だが、あくまで地方自治体の判断で運営できる。コロナ等の状況で判断されたい。強制はしない。」

「導入条件も揃っていない所が条例だけ制定しても仕方がない。各都道府県が各市区町村教育委員会に条例制定を強制しないことも確認したい」

「4月からすべての学校で上限45時間を達成できていると思っていない。各自治体の実情にあった形で検討を進めてもらいたい」

「導入できるような学校があると把握しているのか。上限年360時間は年間10ヶ月超勤するとして、休憩時間も取れていない計算で1日1時間超勤となる。普通の職場なら1日1時間以上超勤しているのが現実だが」

「働き方改革を進める一つのきっかけ。条件をクリアできる学校が出てきたときに働き方改革に繋がる・・」

「上限規制の時間が守られていることが大前提で、守られていない中での導入はしてはいけないと考えて良いか」

「上限時間が守られていることが前提となる。また、育児介護の先生には配慮するなど、講ずべき措置も全て満たされていることが条件」

「絵に描いた餅になることが明らかだ。労基法で決められた上限時間は割増賃金がついている。教員は0だ。政策として失敗ではないか」

「そうならないように・・虚偽の報告は懲戒処分だとか国から言っていかなければならない。」

「確認するが、条例が作らない自治体があっても文科省は何も言わない、条例があっても学校の判断。導入できない学校がほとんどだと思うが強制はしないことで良いか。」

「実情を踏まえて判断してもらいたい」

「文科省としてどういう方向に進もうとしているのか。これだけグレーだと学校はもう持たない。どこに踏み込むのか、給特法のままで時間外をさせないか、労基法適用して残業代払うか。二つに一つしかない。」

「国会の答弁でも、検討の観点として教師の職務、業務をどう捉えるか云々・・」

福島瑞穂参議院議員

「労働の現場だから労基法を適用するしかない。適用できない職場がこれだけ広範囲にあるのは子供によくないし、働く教員にもよくない。財務省との関係で道のりがあるかもしれないが、チームを作って検討を進め、実現するべきだ」

「実は文科省の中でもチームを作って検討を進めている」

導入は強制しないと明言

1年単位の変形労働時間制は、各自治体の判断で条例を制定し、各職場の判断で導入を決定する。文科省が強制する立場にないということを明言した。

そもそも、導入の前提をクリアできる職場など無いことを暗に認めている。

途中、福島瑞穂参議院議員が参加し、文科省内に労基法適応検討チームを作り労基法適用に向かうべきだという発言があり、拍手が起こる。

文科省も既にチームを作り、検討していることが明らかとなった。

交渉を経て・・

「給特法を廃止し、労基法を適用せよ」とは、全学労組がこれまで言い続けてきたものだ。

1971年制定から39年。

今現場で働く教員のほとんどが教員になる以前にできた制度の、時代との錯誤にようやく注目が集まり議論がされている。今後の動向を注視していく必要がある。

特に、来年度に施行される1年単位の変形労働時間制についてはその導入において上限時間が守られていることが導入の前提であること、文科省は導入を強制しないと明言した。

今後各地方自治体で条例の制定の動きがあろうが、まずは横浜市に条例を制定させないこと、されても各職場で導入阻止できることが再確認された。

現場で理解を深め、長時間労働を正当化させない職場づくりをしていきたい。

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