第一分科会「神戸市教委『働き方改革パンフレット』から見えるもの」
神戸のメインレポートから
第一分科会は教員の働き方改革について、職員向け及び保護者・市民向けパンフに記載されている内容をもとに討議された。
パンフには、職場の実態調査をもとに「教職員の過酷な長時間勤務」の例として、朝は7:00から、夜は22:00まで、休憩時間もなく、勤務時間外に会議や成績処理等の業務がされていることが明記されていた。
保護者・市民向けに教職員の労働実態が発信されたことや、夜間電話対応、部活動、行事の見直しなど具体的な提言と「理解」「協力」「お願い」を求めていることについては積極性が認められる。
一方で、「職員の意識改革」に重きを置いていること、管理職の責任がほとんど触れられていないこと、また、学校事務職への労働強化によって「教員」のスリム化を図ろうとしていること等の課題が指摘された。
全国の働き方改革実施例
横浜からは「働き方改革通信」をもとに、横校労がこれまで交渉した結果として、超過勤務実態の集計や外部スタッフの増員など具体的な取り組みと、課題点について議論がなされた。
各地からは、積極面として留守電の実施や保護者向けプリントの配布、負担軽減委員会の校内設置等が挙げられた一方、高校の教務アシスタント一斉引き上げ(大阪)、アシスタントが保護者でやりづらい(北九州)、管理職が標準授業時数を超えて出そうとする(大阪・東京)、児童生徒と触れ合う時間を設けなければ行けない(山梨)等の課題が出された。
まずは管理職にやらせる!
どの都市でも挙げられたのが、教員や保護者の意識はなかなか変えられないということ。校内で新しいことをやろうとなったとき、教育論議に入ったら埒が明かない。
大事なのは、その代わりに何を減らすか、決まった時間をどう使うかという論点である。我々に時間外勤務を命じている管理職に対して、超勤削減の目標を出させ、その結果を出させるということを交渉していく必要がある。
第二分科会「会計年度職員のこと」
最初の情報交換では、有期雇用者の呼び名やその形態が各自治体で異なるだけでなく、一時間の報酬額や空き時間の扱いも大きく異なることや、次の働き口を見つけられるかが切実な問題であるという話が出た。
そして不当な働かせ方をされても、声を上げることで次の職への当てが途切れてしまうことが懸念され、実際には行動につなげられないことがもどかしいという課題が上がった。
また、残業をすることによって次の雇用が更新されないことがあったり、空き時間に仕事した分を残業代として請求したら、職場にいる時間を制限されたりしたなどの厳しい状況も報告された。
今後、組合としてできることは勤務時間を見直し、サービス残業が当たり前になっていないかを見ていくことや、授業時間外に行っている業務を仕事のひとつとしてとらえていくと共に、交渉を進めていく際には今日得ることができた他団体の情報を役立てていくことなどが上がった。
自分が正規職員になって十数年。臨時採用や講師として働いていたあのころのことをすっかり忘れていたが、当時からあった期限付き職員という立場であるが故の問題を思い出した。
最後に「いろいろな現状はあると思うが、それでも、深刻な問題としてどうにかしたいと声を上げていくことが必要なのだ。」という全体閉会式での言葉が心に残った。
第三分科会「日の丸・君が代処分問題 ILOセアート勧告」
東京都では2003年度~2017年度卒業式まで、累計で都立高校397名、特別支援学校54名、小中学校32名の教員が、「君が代」を「斉唱しなかった」「起立しなかった」等で、戒告、減給、停職、または再任用拒否などの処分が出たために、第1次~4次に渡る裁判が闘われています。
結審したものは概ね減給以上は裁量権乱用として取消という判決になっています。校長が「君が代」斉唱時に職員を起立させるために異常な指示があったことも明らかになっています。
特別支援学校では、呼吸器を付けた生徒のアラームが「君が代」時に鳴り担当教諭が屈んで処置を行ったが管理職が来て起立斉唱を指示した。職員がトイレ介助のために起立斉唱をしないことを避けるため、トイレが頻繁な生徒に対して「君が代」斉唱時にはトイレに行かせないようにオムツをさせることを指示をしたなどです。
この様な異常な事態に対して東京の独立系組合アイム’89が、セアート*に申し立てを行ったのです。そして、4月に日本に対する勧告が上部組織であるILOとユネスコで承認され公表されました。
要約すると
- a愛国的な式典に関する規則について教員団体と対話する機会を設けること。
- b消極的で混乱をもたらさない不服従の行為に対する懲罰を避ける目的で、懲戒手続きに ついて職員団体と対話する機関を設けること
- c懲戒審査機関に同僚職員の関与を得ることを検討すること。(d,e略)
- f上記勧告に関する取り組みについて合同委員会への通知を怠らないこと。
です。
セアートは、国際基準に照らして「ある歌を歌ったり式典で起立したりすることは極めて個人的な行為である。」から「混乱をもたらさない不服従の行為」を認めず「行為を強制する規則は個人の価値観や意見を侵害する」としてきっぱり教員の市民的自由を認めました。
懲戒処分課程でも「懲戒措置も教員の立場にある者が関わって行われたようにも見えない」として懲戒のしくみ、懲戒審査機関への同僚職員・教員団体の関わりを促したのです。
その他「再発防止研修」への警告、障がい児の人権に対しても厳しく日本に是正を勧告しており、アイム’89の主張をほぼ認めた画期的なものでした。
同様に「日の丸・君が代」の処分が行われている大阪で当局が「セアート勧告を読んだ」とし、研修や聞き取りなどで昨年と異なる動きになっているとの報告もありました。
教委交渉時だけでなく、職場の仲間とこの勧告の意義について広く共有、意見交換をして、私たちの基本的人権を侵害する事態を許さない意識を広げていく必要性を感じました。
*セアート(CERAT):ILO(国際労働機関)とユネスコ(国際教育科学文化機関)の 共同専門委員会。1966年ユネスコで全会一致で採択された「教員の地位に関する勧告」に照らして是正勧告を行う。
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