ニュース 2023年5・6月号

学校の風景

~学校現場での地産地消と障がい者雇用~

 退職後も、再任用時の学校の支援活動として、餅米栽培の活動や百葉箱の維持や記録用紙の取り替え、また、花壇の草抜きや池の環境整備、フェンス際や段々花壇の美化等に取り組んできた。

 最近は、放課後デイサービスで出会った、障がい者手帳も持つ青年の保護者から依頼を受け、就活中の青年と給食から出る野菜クズ埋めで、地産地消の活動も続けている。

 フェンス際や段々花壇の美化ではスナップエンドウやキクイモの花を愛でてもらい、収穫した豆や芋は希望者に分配してきた。

 給食野菜クズ埋めでは、ヒゲ根付きのコマツナをダメ元で移植したところ、一本ずつ再生し、これも分配が可能な収穫物になった。

 餅米栽培では、コロナ渦で、五学年などの農業体験としての田植えをやめた学校もある中、支援先の学校は五学年だけの活動だった用水路の清掃から畦の補修、育苗、田植え、稲刈り・脱穀、モチつきまでを各学年に少しずつ振り分けて活動を維持してきた。コロナ渦の間の田植えも、一クラスずつ時間をかけて、距離を取って行うなど、思い入れが深いことから、支援を続けてきた。

 教員志望者自体が減り、代替教員も不足し始めて、定額働かせ放題の給特法がようやく取り沙汰されるようにはなって来たが、働き方改革の実を揚げるためには、労基法の趣旨を踏まえて、先ずは残業実績に応じた賃金が支払われるべきだと思う。

 同時に、プール清掃などで、外注が始まったように、技術員さんだけでは対応しきれないほど広い校庭の整備や校外活動などでは、地域やボランティア活動に期待するのではなく、外注ができる予算が必要だと思うし、その際は公的機関である学校現場が率先して、障がい者雇用を促進すべきと考えている。

 なので、二年目の今年も、就活中の青年と、給食から出る野菜くずを花壇に埋めながら、単なるボランティアで終わらないように、地産地消のコマツナや、美化を兼ねたスナップエンドウやソラマメ、キクイモ、フキなど、当面実入りのある栽培活動も続けている。

職場交渉の実際 …より良い職場づくりのために

   執行委員長 名児耶 理

 横校労組合員が所属する職場では、毎年度初めに校長との間で勤務条件の交渉を行なっています。この交渉は、地方公務員法55条「地方公共団体の当局は、登録を受けた職員団体から、職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関し、及びこれに附帯して、社交的又は厚生的活動を含む適法な活動に係る事項に関し、適法な交渉の申入れがあつた場合においては、その申入れに応ずべき地位に立つものとする」に基づいて行われるものです。

 労働組合の立場から教職員の勤務条件をより良いものにするために、職場の課題をまとめ、申し入れを作成し、これに対して校長に回答を求めるという形で進めていきます。

 横校労は少数組合ですが、少数だからこそ機敏に対応できるこうした職場交渉を組合運動の基本としており、これまでの経験の積み重ねが受け継がれています。

 今年度も各職場で校長交渉を行いましたので、その一部を報告します。

大正中学校校長交渉 報告

【勤務時間の割り振り】

○二〇二三年度の勤務時間の割り振りについて早急に文書にて職員に提示されたい。また、職員会議等を開催する場合の割り振り変更について提示されたい。

回答↓初めの職員会議の資料に載せて示すつもりだったが時間超過してしまった。文書ではないがデータにあるので確認されたい。四月の頭に出すべきであった。

   職員会議時の割り振りについては、休憩時間を終えてからの開始は難しい。議題の内容や授業を工夫していく必要がある。延びた場合は適切な配慮を出したい。

 管理職は勤務時間の割り振りについて、勤務時間の開始から終了時間、そして休憩時間を職員に周知する義務があります。皆さんの職場では年度初めにしっかり明示されていますか。ひょっとすると休憩時間がわからないなどという職場もあるのではないでしょうか。休憩時間を意識する間もないほど業務が詰め込まれているのが現実かもしれませんが、休憩時間は労基法上管理職が労働者に必ず取らせなければならないものです。

【休憩時間】

○割り振りに示されている休憩時間が、本校においてはほとんど取得されていない憂慮すべき現状がある。休憩時間は労働基準法において、その取得が明確に規定されており、その罰則規定も存在する。(法定の休憩を与えなかった場合や一斉に与えず若しくは自由に利用させなかった場合には、使用者に対し、六ヶ月以下の懲役又は三〇万円以下の罰金が処せられる)これについての見解と、改善の方策について示されたい。

回答↓労基法に抵触している事態は認識している。現実にどういうやり方がベストか、授業時間との兼ね合いでなかなか変えにくい。適切な配慮で返したい。

 特に中学校では、休憩時間の設定がある放課後は部活動や生徒の活動、会議等が設定されており、休憩時間が取れていない職場がほとんどではないでしょうか。休憩時間は“途中付与”、“一斉”、“自由利用”という三原則があります。市教委は一斉でなくても分割してでも取れるようにと言いますが、いずれにせよ現実に休憩時間を取ることは不可能な実態があり、抜本的な改善が必要です。また、行事予定表に会議が設定されている時間が休憩時間と重なっていれば、管理側が休憩時間を取らせていない裏付けとなります。

 そして回答では(時間外勤務として)適切な配慮で返すとありますが、本来は「勤務時間の適正な割り振り」をすることが大前提なのは言うまでもありません。

○教庶務システムでは現在、休憩時間が取得できなかった事を確認・記録することができない仕様になっているが、これを確認・記録する方法を明示されたい。

回答↓システムにいれられない仕様はわかっているが、休憩が取れなかったことは示して欲しいので、時間外実績のコメント欄に入力するということで記録できるので、手数ではあるが入力してもらいたい。

 横校労組合員は回答にあるようなやり方で休憩時間が取れなかったことを入力しており、これは時間外勤務の大切な記録となります。

 毎日休憩時間取れなかったとすると、月の超過勤務は四五分×二〇日間として一六時間も増えることになり、システム上の数値より大幅に多いことになります。

 以上は、勤務条件の基本的な所で、どの職場でも同様に最初に確認しています。さらに、各職場、各組合員が抱える諸問題を申し入れに組み込み、交渉を行っています。

 職場では誰もが当たり障りなく、面倒な問題には口を出さないような風潮が強まっています。それでも現状に対して辛い思いを持っている人や、おかしいと思っている人もいるはずです。こんな時こそ、職場の声を集め、職場の課題に応じて交渉ができる労働組合の存在が必要だと考えています。

岩崎中学校校長交渉 報告

 岩崎中学校では、二〇二三年五月三〇日に校長交渉を行いました。今回は、校長交渉の手順、およびその様子をお伝えします。

 まず、交渉にあたり「勤務時間に関する申し入れ書」を作成します。定型のものはありませんが、岩崎中学校では、以下のような「申し入れ書」を作成しました。全部で一三項目ありますが、その一部について紹介します。

【勤務時間の割り振り】

① 二〇二三年度の勤務時間の割り振りについて提示されたい。また、職員会議等を開催する場合の割り振り変更について周知されたい。さらに、割り振りが異なる職員の周知をされたい。

【休憩時間】

② 割り振りに示されている休憩時間が、本校においてはほとんど取得されていない現状がある。休憩時間は労働基準法において、その取得が明確に規定されており、その罰則規定も存在する。(法定の休憩を与えなかった場合や一斉に与えず若しくは自由に利用させなかった場合には、使用者に対し、六ヶ月以下の懲役又は三〇万円以下の罰金が処せられる)これについての見解と、改善の方策について示されたい。

【宿泊行事の勤務時間の割り振りと振替について】

⑦ 宿泊行事については早期に勤務時間の割り振りを提示されたい。また、宿泊行事の実際の勤務時間を何時から何時であると捉えているか明らかにされたい。

 作成したものを校長に提出し、次に交渉日を設定します。岩崎中学校では四月二七日に提出をしたものの、ゴールデンウィークや修学旅行、会議などが重なり交渉日が五月三〇日となりました。交渉当日は、申し入れ書を元に校長と交渉を行います。岩崎中学校では、校長に対し、同じ職場の横校労の組合員と二人で交渉を行いました。一三項目からなる「申し入れ」について文章を一つずつ読み上げ、交渉を行いました。時間にしておよそ三〇分。結果として、二泊三日の宿泊行事後の一日の休養日の設定、時間外勤務や取得できなかった休憩時間の対応として「適切な配慮」の運用、過酷な労働実態に対して四五分授業などの対応を確認することができました。

 われわれは常に過酷な労働を強いられています。自分の労働実態を把握するとともに管理側との交渉により、少しでも労働条件が良くなるようにしていかなければなりません。

   (中支部 猪狩良和)

山内小学校校長交渉 報告

 勤務先の山内小学校でも校長交渉を行い、その中で「時間外勤務」を減らすための取り組み等についても、確認しました。いくつかの取り組みを紹介します。

〇毎日、休憩時間を職員室前ホワイトボードに掲示

 ・仕事をしている職員が多いですが、休憩時間は確保されており、会議等が設定されることは基本的にはありません。

〇日課表の工夫

 ・朝の一五分を学習時間として時数計上し、六校時は三〇分設定の「スキルタイム」としています。児童は、六校時の日も一五時五分には下校するため、放課後の時間が確保できます。

 ・前任校では、六校時の時の児童の下校時刻は、一五時半過ぎで気付けば一六時。早く下校することで生じるゆとりは、児童にとっても大きいと感じます。

〇余剰授業時数を過分に確保しない

 ・三〇時間(五日分)ほどの余剰授業時数を確保しなければならないと思っていましたが、勤務校では必要最小限の余剰時間しかありません。校長は、計画段階で、標準授業時数を満たしていればよいとの認識です。時数に余裕がないことで大変な面はありますが、内容に軽重を付けて指導することで共通理解しています。

〇「成績処理期間」を一週間程度設定

 ・前期、後期のあゆみ(通知表)の作成のための一週間、子どもたちは一時半に下校し、午後の時間を成績処理に当てることができます。

〇メール配信の活用

 ・基本的に紙での便りはなく、ほぼ全てが配信。様々な承諾書等もネット配信で集める手間がありません。

〇計画年休の実施

 ・教科担任制やクラスルームを使っての学年授業を行い、年間に二回程度の計画年休を実施予定です。

〇重点研究のスリム化

 ・学年で、指導案作成、事前研、授業研、事後研と分担して研究。職員全員が授業公開をする学校もありますが、毎月、指導案検討、研究会等にかなりの時間と労力が必要でした。

〇学年会計を事務職に依頼

 ・教材の注文は学年の会計担当が行いますが、会計処理の一部を事務職にお願いしています。

〇地域の福祉事業所への依頼

 ・週に一度、掃除が行き届かない場所の清掃や長期休業中のエアコン清掃等を社会福祉法人「かたるべ会」に依頼しています。

〇職員室アシスタントへの依頼

 ・印刷物等だけでなく、YPアンケートなど入力に時間のかかる作業を、職員室アシスタントにお願いしています。

〇その他

 ・学校評価保護者アンケートの結果を、学校運営協議会の委員に集計、分析を依頼する。

 ・前期のあゆみの所見をなくす。健康手帳をやめる。(発育測定の結果は紙で知らせる)

 ・校外学習時の団体乗車をやめ、各自の交通系ICで乗車する。

 勤務校でも時間外勤務はありますが、前任校よりは早く帰ることができています。「適切な配慮」を個人の都合の良い時に取れる環境も整っています。小さなことから、削れるもの、縮小できることをやっていくことで、時間を確保できるのではないでしょうか。職員全員で知恵を出し合うことが大事だと感じています。

   (東支部 中島佳菜)

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横校労メーデー学習会2023

 =横浜の街のすぐそばで軍用機軍用船が出入りしていた!!=

   書記次長 高野 猛

 今年度のメーデー学習会は、「実戦部隊が横浜みなとみらいの中心部に配備!横浜ノースドックについて知ろう」をテーマに、二〇二三年五月二〇日土曜日に行いました。午前中は会議室での座学、午後はさまざまな場所からノースドックを見学しました。

横浜ノースドックとは?

 JR東神奈川駅から海に向かって一・五㎞ほどの埋立地「瑞穂ふ頭」にあるアメリカ陸軍及びアメリカ海軍の港湾施設。海からはベイブリッジをくぐってそのまままっすぐ二㎞ほどに位置する。

講習会

 横浜市健康福祉総合センター会議室にて、リムピース編集部の星野潔さんを講師として迎え、ノースドックについて学びました。(リムピースとは、青森の三沢から沖縄の辺野古まで、日本全国の在日米軍基地を監視し、その情報を公開、データの無償提供、講演活動を行っている団体。神奈川県内では相模原、厚木、横須賀、ノースドックなどの基地監視を行っている。ホームページで日々の詳細な報告を更新)

 写真と詳細な説明資料に基づいて、ノースドックの場所、歴史、どのような基地なのか、配備されている部隊の軍事的な意味、揚陸艇部隊配備の問題点など説明していただきました。入港する艦船の名前や装備、どこからきて、どこへ行くのか、何が積まれてきたのか、など写真で分かる事実を豊富な裏付けにより、説明していただき、より深く理解することができました。

 例えば、米軍が所有する五隻の音響測定艦(潜水艦を探知するソナーを装備)がすべてノースドックに配備されており、米軍の中国に対する警戒意識の高さ、在日米軍基地が中国との戦争の準備の重要拠点となっていることを実感させられました。日本の航空法違反にあたるヘリコプターやオスプレイの離発着なども行われていることを知ると、世界ではロシアとウクライナが戦争を行っていますが、遠い場所の他人事ではなく、いつ日本が巻き込まれてもおかしくないということがわかります。

現地見学

 講習後、高層ビルの展望台からノースドックを見学しました。まさに午前中の講習で学んだままの様子が高い場所から確認できました。高速輸送艦グアムや巡航ミサイル観測船ハワード・O・ローレンツェン、中型揚陸艦などが確認できました。

 次にハンマーヘッドに移動してシーバスに乗り、海上からノースドック付近へ。ノースドックのすぐそばを通過して、横浜駅着。東神奈川に移動し、徒歩でノースドックへ。途中、講習会で紹介された「村雨橋」(ベトナム戦争の末期、当時の市長が村雨橋の重量制限オーバーを理由に市道通行を許可せず、戦車の搬出を防いだ)を通り、千若町二丁目信号の先の「関係者以外立入禁止」と書かれた鉄橋を越えてノースドック正門前へ。みんなで記念撮影を行いました。

 商業地・住宅地のすぐそばに米軍の重要拠点があり、そこで訓練などが行われていること、アジア地区で「何か」があれば、望んでいなくても巻き込まれていくこと、それらについて多くの市民が全く知らないことの怖さを感じました。

参加者の感想

・本当に知らないうちに米軍と自衛隊の関係やこれからの戦略がここまで来ていたと驚いた。新聞やTVのニュースでは分からない点を日々の監視活動の積み重ねから知らせてくれたのは良かった。

・私たち市民に何が出来るか?で「安保違憲訴訟」の原告になっています。ノースドックの問題も究極的には安保条約地位協定に行きつくと思います。日本は今、全くアメリカの植民地になっている。何も出来ない。政府は、何も抗うことをしない。報道も同じ。そして、司法も三権分立になっていない。原告が被害を訴えても「戦争で加害者になってないから、訴える資格なし」と。無力!

・神奈川は沖縄に次ぐ米軍の基地であることを痛感しました。

・戦前の空気感に似てきている、ということを最近よく耳にします。こんなに身近なところにも、危険がせまっていることを知りませんでした。今日、たくさんの情報をいただけましたが、多くの方にも現状を知り、問題意識をもってほしいと思います。

・この横浜の街の中心に、米軍のノースドックがあることも知りませんでした。米軍である以上、戦いのために動いている団体ですから、戦争の火花がちらつかされているようで、恐ろしくなります。日本はアメリカに守られていると思おうとしているけれど、アメリカにとって日本の存在は、対中国向けの最前線なのだということを意識しました。改めて、日本をアメリカの戦争の中に巻き込まないでほしいと思いました。日々、自分の頭の上を轟音で飛んでいく物体を見ると、怖くてたまらない。

・米軍という話を聞くと、沖縄などに注目されがちだが、横浜にも米軍の戦力が集まっていることは知らなかった。オスプレイの事故が横浜でも起こる可能性があることや戦闘機の修理が行われていることは、日本の平和を脅かすものである。こういう事実はもっと多くの人が知るべきであり、公表していくものだと思う。

・現在、憲法改悪が問題になっているが、憲法のさらに上に安保条約(日米地位協定)の存在があり、制空権などいろんな裁判が日本より米軍優先で行なわれているということが、そもそもの問題と感じさせられた。また、アメリカは民主主義を守るために戦うなどとしているが、アジア蔑視などもあり、ベトナムで枯葉剤、日本で原爆、水爆の投下と、人権無視の戦争犯罪を行っている。世界各地に米軍の基地を展開し、いつでもどこでも紛争を起こせるようにして、軍需産業をテコに資本主義の延命を計っていることを銘記していきたい。

・様々な軍用機、作戦名等、難しい言葉があったが、そういうものが自分の生活する範囲に既に入っているということを実感した。対中作戦において、南西諸島を含め、日本列島が戦場になるであろうことが、素人目にも分かったし、あまりにも米軍が入りこんできている実態から、日本の主権国家という姿は見えない。米軍の傘下では、どうにもならない目の前の事実、身体的な感覚で自分が置かれている状況を考えていかなければと思う。

・横浜の繁華街のすぐ近くにノースドックがあること、様々な軍用機、軍用船が出入りしていることを全く知らなかった。多くの人に知ってもらいたい事実だと感じた。認められていないノースドックで軍用機の離着陸が行われていることなどに対して、日本政府は「それは認められていない」と答弁するのみで、米軍に抗議しない姿勢だということを聞き、アメリカと対峙できないままの日本政府に歯がゆさを感じた。アジアのリーダーとして、唯一の被爆国として、戦争を起こさないための努力に、日本ならではのアプローチで尽力してほしいと強く思った。

職場から

県立定時制高校『郷土史』の授業より

「はぁい、みんな目を瞑って!」「これは何の音?」と言いつつ、生徒に見えないように、教卓の下で小銅鐸のレプリカ(滋賀の野洲から取り寄せた本物のレプリカ)を振る。

「何だ?」「鈴じゃねえ?」「鈴にしちゃ、ちょっと重い音じゃねえ?」などと聞きつつ、音の正体を推理させたあと、鈍い光を放つ銅鐸を見せ「これは何でしょう?」

 キョトンとする生徒もいる。そのうちに「銅鐸!」という声がどこからともなく聞こえる。

「正解!お見事!」生徒にレプリカを回し実際に触れさせる。生徒は指で触ったりじっくり眺めたりしている。音の基である「舌」の形(細長い棒)に興味を示す生徒もいる。

 佐原真さんの本を使って、生徒とともに銅鐸の絵を読み解く。トンボがわからないアフリカに繋がる生徒もいる。

 文字ばかりの授業だとつまらないので、外側の枠だけ示した銅鐸に自由に絵を描かせる。

「次の時間に絵のコンクールをします!」

 郷土史という授業なので、神奈川の小銅鐸について、海老名市出土の二口と平塚市出土の一口の小銅鐸の写真を見せる。海老名カルタも教材に。

 最後に加茂岩倉遺跡(一度に三十九口の銅鐸が出土)の近くの和菓子屋から取り寄せた銅鐸最中を配るとチャイム!

   (県立高校定時制 教員)

読者の声

 東日本大震災から一二年が経つ。横校労ニュースの裏面連載を見るたびに、あの時のことを風化してはいけないと。家族が被災された佐々木選手が三月一一日での活躍のWBCでインタビューには、胸が熱くなった。

 震災で福島の原発事故で放射線が問題になった時、放射線について指導する時間が設けられた。学年研で話し合いではどのように授業を流すか、とても悩んだことを思い出す。キューリー夫人を取り上げ、教科書通り流した。日常で生活する分には特に問題ないと。

 甲状腺の異常を訴えている福島県の児童のニュースをテレビで見るたびに、原発事故による放射線と本当に因果関係がないのかと疑問に思い、自分自身の胸の中がざわめく。

 東京五輪は、復興五輪ということで開催された。まだ、復興は道半ば。原発事故処理問題等が解決し、もとの生活が戻るまでは決して、風化させてはいけないと思う所存である。

   (小学校教員)

 還暦である。周りは、「給料が減ったが、仕事量変わらず。」と夜九時にメールがくる。「仕事を続けたいが、体がついていかない。」「早期退職にしようか。」とも。

 コロナの時期が抜けて会議はzoom、子どもiPad、便利になったことも多いが、データ収集、情報過多、コロナ前に無理に戻そうとして仕事を増やすお役所。若い人が教員になりたがらないというのも分かるし、これでは私たちも「元気なうちは働いて」という気にはならなくなる。すると、ますます人員不足。悪いスパイラルだと思う。

 A研・B研(小学校の月一度の教科領域の区ごとの集まり)、宿泊体験など本来の意義がどこかにいき、「やらなければならない」になっていない?前例踏襲、上辺だけで決めてない?四歳の孫とゲームをやりながら思う今日この頃である。

「横校労」の記事を読むと、様々な現場の思いがよく伝わってくる。管理職にこそ、読んでほしい内容である。

   (小学校教員)

千葉学習サポーター事件 千葉地裁裁判報告

 五月二二日、千葉地裁松戸支部で「組合活動家敵視による学習サポーター不採用損害賠償請求訴訟」の第二回口頭弁論があった。

 第一回の弁論の時は裁判官が一人だけのいわゆる単独審の形。傍聴者の半数は法廷に入れなかった。今回、裁判官が新たに三人選任され合議審の形に。法廷も最大規模の五〇六号法廷に変更された。開廷時の廷吏の「起立!」の号令もなし。審理後の総括集会が同じフロアの広いロビーで行われたが、裁判所はこれも黙認。ある意味ごく自然な対応。「お上によるお裁きの場」ではなく、裁判を起こす市民の権利を前提とした開かれた司法のあるべき姿。

 入廷した裁判長、傍聴席を一瞥し、少し目を見開いた。驚いたのだろう。長く裁判官を務めていても満席の傍聴席を目にすることはまれ。

 向かって右側の被告席に千葉県の若い代理人(弁護士)が四人、後列に県の吏員が六人、窮屈そうに坐っている。原告席には吉田晃さんが一人だけ。代理人を置かない本人訴訟。しかし、傍聴席は全員が原告の支援者だ。

 さて内容だが、まず裁判官が被告代理人に対し「裁量権を逸脱していないという主張ならもっと具体的に根拠を示してほしい」と。これは被告側が提出した書証、吉田さんの面接評定票二枚に関する指摘。原告側もこの書証に対して数一〇項目の求釈明を出している。

 この評定票、二人の面接官とも四項目(①資質・適正②専門性③適応力④豊かな人間性)にB(やや優れている)二つ、C(やや劣っている)二つをつけていて、合計を三四点とし、総合評定Ⅲ(採用しないほうがよい)で不合格とした。帳尻が合いすぎることからして、たぶんあとづけの文書だろうと思われる。これだけではいかにも不十分という裁判所の判断が冒頭の裁判長の発言。

 評定票の文章表記欄には一人が「サポートできるか?気にかかる」、もう一人が「しっかりサポートできるか不安」と記入しているが、何をもってそう判断したのかはこれだけではわからない。たった数分の面接で「資質や適性」「適応力」まで見通せるものか。根拠を示してほしい。①~④の評価項目そのものの整合性も疑わしい。面接の主務者、二人の面接官ともに証人尋問をしたいものだ。

 被告は次回までにこの書証についての書面を出すことに。次回弁論は7月20日16:00~、506号法廷。

   (赤田圭亮)

働き方いろはの さ

給特法国会審議

文科省22年度勤務実態調査は実態を反映しているのか

 文科省は「2022年度教員勤務実態調査」の速報値を発表しました。発表によると持ち帰り残業時間を含んだ教員1日当たりの勤務時間は小学校:11時間23分、中学校:11時間33分。異常な長時間労働ですが、報道のフレームは2016年度調査と比して小:22分、中:19分の減少を「働き方改革」が一定進んだかのように印象づけています。しかし、調査結果を分析していくと、それが表面的なことが分かります。まず16年度比で持ち帰り残業は小中共に増えているのです。これは業務の見直し、削減もせずに管理職が「早く帰りましょう」などと声をかけた結果、持ち帰って仕事をせざるをえない実態を示しています。またベクトルは労働時間増へ大きく動いています。22年度はまだコロナ禍の影響下にあり学校行事、地域行事、部活動などの多くが中止・縮小・制限されていた中での調査でした。

 今年度は学校行事、地域行事など多くは復活し、部活動制限も曖昧になり歯止めが効かなくなってきています。加えて「休憩時間」についての記述がありません。多くの現場では休憩時間(労働からの完全な解放)は取得できません。休憩時間取得の有無をはっきりさせ、取得できていないのであれば勤務時間に加算されるべきです。

「教職調整額引き上げ」は残業代を払わないためのごまかし!

 このような「実態」に対して政府・文科省は「教員の処遇を抜本的に改善する」としていますが、中身は教職調整額を「4%から10%引き上げる」が柱のようです。これは、1966年度実態調査時の月の時間外勤務が8時間程度であった頃に定められた額4%を2.5倍し10%にするというものです。あなたの教職調整額が月10000円でしたら25000円になるという事です。辻褄を合わせるため「在校等時間」の上限を月20時間(8h×2.5)にするとしていますが、現在の「在校等時間」上限45時間でさえ、時間外勤務抑制策として全く機能していませんから上限20時間は絵に描いた餅、何ら意味をなしません。

 一方で例えばあなたの時給が3000円で、1時間時間外勤務をしたとすると労基法では最低25%の割増賃金ですから最低で3750円の残業代です。従って、3750円×月の時間外勤務時間があなたの月の残業代です。いくらになりますか。それを、教職調整額を少し多くすると言ってごまかそうとしているのです。

 教職員で残業代が支給されていないのは労基法でなく給特法が適用されている私たち公立学校教員だけです。私立学校、国立学校の教員はもとより、私達と職場を共にする事務職員、栄養職員、用務員は残業代が支給されます。教職調整額は給特法上の決まりですからその引き上げは給特法が継続される事を意味します。2万円弱の教職調整額引き上げと引き換えに残業代不支給の給特法が永久に適用される事に道開くのです。

 私たちは8月下旬文科省交渉を行います。労基法適用に向けて共に強く要求していきましょう。

   (中支部 平川正浩)

水俣と私

 一九五六年の水俣病公式確認から六七年。その後、一九七三年三月熊本地裁で、認定患者に対しチッソの補償責任を確定する判決が出てから五〇年。判決後、訴訟派と自主交渉派は、チッソ東京本社で一時金以外の補償を求めて座り込みを続け、七月に協定書を結んだ。

 この時私は大学生で、多くの支援学生が東京本社にいるのを新聞記事で読んでいたが、東京まで行こうとは思わなかった。が、学園祭で土本典昭監督の水俣の映画を見たのと、『公害』の授業に出た事で気持ちが変わった。授業の講師は弁護士で、以前から群馬県内で続く東邦亜鉛安中精練所からのカドミウム被害裁判の、弁護団の一人だった。詳しい裁判の話やほかの公害被害についても知る事ができた。すぐには無理でも、就職したら水俣に行ってみよう…

 実際に出かけたのは四年目の夏、天草から連絡船で水俣の港に着いた。とにかく不知火海を通ってみたかった。すでに袋地区に水俣病センター相思社はできていた。

 二回目は八四年。一〇日間の生活実践学校に、三歳の娘と夫と参加した。相思社の集会棟に宿泊して、午前中は講義。講師は相思社の職員、自主交渉派リーダー川本輝夫さん(愛読書は六法全書。手元に置いていた)訴訟派の方達。午後は街歩きに出かけ、水俣駅正面に立つチッソ工場周辺、メチル水銀を含んだ工場排水を水俣湾に流していた百間排水口、患者さんが多発した月浦、坪谷、湯堂、出月などの漁村、元漁師さん達が減農薬で栽培するみかん山など、あちこちを歩いた。

 その後は子ども達と、あるいは一人でと数年おきに水俣に行っている。その度に相思社の職員に街案内をしてもらった。水俣は不知火海の魅力だけでなく、山が迫り湧水が豊富で、無農薬のお茶栽培をする人たちもいる。また昔ながらの棚田を手入れして使っている。長いこと『チッソのおかげで水俣は発展した』と言われた企業城下町だったが、チッソを頼らない生き方をする人達にも出会った。

 かつて工場排水で汚染された水俣湾は一三年かけて埋め立てられ、九十年にエコパーク水俣が完成した。その下には私が街歩きで見たドラム缶(湾内の汚染魚と海底のヘドロが入っている)がたくさん沈められている。

 去年久しぶりに街歩きをしたが、毎年四〇〇人ほどの人口減少の影響は商店街に出ていた。でも現在も国やチッソなどを相手に訴訟を続ける人達がいるし、年々増していく障害と付き合いながら患者さん達は生活している。水俣病センター相思社も設立から五〇年になるが、職員も若い世代に替わり各々が悩みながらも工夫して街案内を行っている。この先訪問者が増えることを願っている。

 水俣にはこれまで、作家、写真家、記者、研究者達が残した物がたくさんある。けれど目の前に広がる景色を眺め、話を聞き、そして歩いて考える旅も大事にしたい。

   (大船支部 森下秀子)

夏炉冬扇

 2023年5月

1日(月) 日比谷メーデー参加

2日(火) 大正中校長交渉

3日(水) 中支部会

10日(水) 執行委員会

11日(木) 大船支部会

17日(水) 東支部会

18日(木) 市教委交渉

20日(土) メーデー行動

22日(月) 千葉学習サポーター裁判

24日(水) 執行委員会

26日(金) 教育委員会傍聴

     ふくかな訴訟第一陣控訴審

 6月

7日(水) 中支部会

14日(水) 執行委員会

17日(土) 全学労組会議

21日(水) 東支部会

24日(土) もうひとつ研巡見

28日(水) 執行委員会

30日(金) ふくかな訴訟第一陣控訴審

編集後記

 新学期の目の回る忙しさがひと段落したところだろうか。

 横校労では、各職場で年度始めに校長交渉を行い、結果を職場に周知している。皆さんは自分の職場の休憩時間を知っているだろうか。初任のころ、休憩時間などよく知らなかったが、今の若い人は「今は休憩時間ですよね。」と確認してくる。いいことだと思う。コーヒーを飲んでスマホをチェックする、そのくらいの休憩は取りたい。同僚とのおしゃべりも大切。

「適切な配慮」についても、「取り方を教えて」「たまにだけど、早く帰れるわ」と声をかけてくれる人がいて、うれしい。残念ながら、「適切な配慮」の適切な運用についてよく知らない管理職もまだ多い。働きやすい職場をつくるために、校長と直接話をすることは、組合活動の根幹であり大事にしたい。

 夏休みまで、あと少し。だが、様々な問題が起きてくる時期でもある。「子どもは色々やらかしながら成長するもの」と割り切って、綿密に、淡々と乗り切りましょう!

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連載第26回

3・11とアート ―《阿賀に生きるいのち》―   山内 若菜

 新潟水俣病をテーマに、現地や関係者への取材から生まれた絵です。阿賀野川は私が描いてきた福島から新潟につながって流れる川とも言えます。忘れられようとする記憶の川の流れを変えるくらい強く、生物多様性やレインボーの意味も含め虹色に光る川のある絵にしたいと思いました。絵には、狂い踊る猫たち、急降下するカラスなどがいます。真ん中に立つのは、堕胎せざるを得なかった妊婦だった女性です。髪の毛は銀箔や馬の立髪により描いた部分もあります。たくさんの微生物を含め命が煌いている様子など、多様な発見をしてもらえたら嬉しいです。

「ノーモア・ミナマタ~阿賀にいきるいのち 山内若菜展」のお知らせ詳細です。

 1.会期 2023年7月1日(土)~7月9日(日)11:00~18:00

       (※7月5日は休館)

 2.会場 医学町画廊(新潟市中央区東中通1-86-19ハイムビル1F)

 新潟水俣病第5次訴訟は提訴から9年が過ぎ、本年9月に結審となります。被害者全員の救済を願う原告団の方の願いを込めつつ、微力ながら何かしたいと思い、新潟展では水俣病に関するものをと新潟若菜組にも励まされつつ描いてきました。

山内若菜情報はこちら

山内若菜HP wakanayamauchi.com

若菜絵ブログ http://wakanaeblog.seesaa.net/ または「若菜絵ブログ」と入力

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