もうひとつの指導書研究会は、去る3月3日、横浜市内の公立小中学校の教科書採択地区を全市一区から各区ごと18区に分割する請願を横浜市教員委員会に提出しました。
請願提出理由として「近年公立学校の教員試験の応募倍率は急速に低下しています。その最大の理由は、・・・学校がブラック企業化し、月90時間以上に及ぶ超過勤務が世間にも認識されるようになった」ことと、もう一つの理由として「現場教員の仕事に対する裁量権の縮小によって仕事のやりがいが薄れてきていることも大きな原因としてあるのではないか、・・・また、子供に教えるという日常的仕事で最も重要な教科書の選択権の喪失ははかり知れぬ影響を現場にもたらしていると思います。」との記述があります。
平成22年に全市一区採択に改悪された結果、それまでに各学校に残存していた学校希望票制度などの現場の意志反映の制度も全く奪われてしまいました。
請願書には続けて「教科書の採択は、本来は現場で教え・教えられる関係にある教育関係当事者が決定すべきものであり、親も含めた学校採択が一番望ましいものと思いますが、そこに向けて全市一括採択以前に実施されていた各区採択にすることは、教員に仕事の生きがいを感じさせ学校を活性化していく上で決して無益なことであるとは思いません。」とまとめられています。
この請願に対して、3月26日横浜市教育委員会は、「横浜市では小中一貫教育を推進しており、市内小・中学校が共通の教科書を使用することで、学習内容や題材、順序が同じことになる利点があることと、また、授業研究の深まりが期待できることなどから、1採択地区で採択を行っています。」との回答をし、請願を却下しました。
この回答の問題点は、まずは、肝心な請願の理由には全く触れない全く不誠実なものです。
また、一括採択によって「学習内容や題材、順序が同じになる利点がある」とされるのですが、一括採択の大義名分とされている「小中一貫教育の推進」にどう利点なるのか理解不能です。
さらにはそれ以上理解不能な「授業研究の深まり」などとの言及があります。
以上のことから、この回答の真意は「一括採択による学習内容や題材、順序が同じになる」利点の強調であり、またこの論理の帰結が「国定教科書」にあることが透けてみえてきます。
「小中一貫教育の推進」はその隠れ蓑に過ぎず、無理のあるずさんな回答としか言いようがありません。
「請願」の背景には現場の多様性を重視する地域主義に根差した教育観が、「回答」の裏には画一性を重視する「国家主義」の教育観が対比されて見えてきます。
前者の観点からブラック企業化した学校の変革を、学校の内から外から考えていきませんか。
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