【文科省交渉】”合法的過労死”へまっしぐら!?

文科省交渉

10時間を超える連続勤務では教員を続けていけない

 政府は、見かけ上の時間外勤務を「削減」し「合法的に過労死せよ」と言わんばかりの「1年単位の変形時間労働制」の導入を可能とする「給特法改正」を臨時国会で強行しました。

これにより、2021年度にも労基法の8時間以内労働の大原則を破壊し最大10時間の労働時間を可能とする制度が導入されようとしています。

学校現場の長時間労働の根本的な解決へ向けた論議を深めることなく、勤務時間延長の分は後でまとめて休みを取ればいいのだという、私たちの日々の生活のリズムをも無視したものです。

 厚生労働省の通知によれば「1年単位の変形時間労働制」は「恒常的な時間外労働がない」ことが「導入の大前提」であると明記されています。

小学校教員の3割、中学校教員の約6割が過労死ラインの月80時間以上の時間外勤務を強いられている現実(2013年調査)を全く無視したものであり「導入の大前提」が無い状態が明らかになっているのにもかかわらず強引な「改正」です。

 加えて、民間企業では「1年単位の変形労働時間制」導入にあたっては労使協定を締結し、労基署に届けるという厳格な手続きが必要になっています。

しかし、教員には労使交渉を認めず、自治体の条例で労働条件を決定できるとし、労働基本権さえ認めていません。

このような過酷な働き方の強要は、子育て、介護、闘病をしながら働く教員にさらなる負担を強い、ぎりぎりの状態で働く仲間が潰れていく懸念を払うことができません。

「これでは教員を続けていけない」という声が聞こえてきます。

時間外勤務時間を覆い隠す、暴力的な給特法「改正」

 教員は「給特法」により限定4項目(①生徒の実習②学校行事③職員会議④非常災害時)以外の時間外勤務は認められていません。

4項目以外は原則時間外勤務を行ってはいけないのです。文科省は現実に存在する時間外勤務は、「勝手に残って仕事をしている」とし、勤務として認めてきませんでした。

ところが、今回一転して時間外勤務時間の上限を月45時間、年間360時間までとする指針を法的に位置づけました。

「給特法」は、「限定4項目以外の時間外勤務は認めない。もし時間外勤務が生じた時は早急に『適切な配慮』を行い勤務時間を平準化しなさい」という論理構成です。

つまり、時間外勤務は「無い」のだから、「時間外勤務手当」はないという事になっているのです。

私たちが受け取っている教員調整額の4%は「勤務時間の内外を問わず包括的に評価して」支給されているものです。

仮に教員調整額を現在の時間外勤務時間を元に時給計算するとたった200円弱。これを持って「時間外勤務手当」と見なす論には無理があります。

従って、今回時間外勤務の上限を定めた事は、「残業は認めない」「無い」とした「給特法」の本来の法の趣旨と矛盾します。

これまでのように文科省が「給特法」の存続にこだわるのなら、時間外勤務をさせないための方策に全力をなすべきです。それを抜きにして、月45時間、年間360時間までの時間外勤務を認めることは、「ただ働き」の強制以外の何物でもありません。

 更に、延長した勤務時間を夏休みに振り替えることも意味がありません。日々の労働時間が異なる働き方は疲労蓄積の大きな原因です。

やっとのことで週末を迎えているのが現状なのに、日々の疲労を「貯めて」おいて夏休みに一気に疲労を回復させることなどできるはずがありません。更に、私たちには研修権があり、また「適切な配慮」の運用もあります。

延長した労働時間の夏休みへの振り替えは、これらの権利の消失をも意味します。そもそも年休も消化仕切れない多くの教員の実情を何ら理解していません。

何しろ文科省は「年間を通した教員の勤務時間を把握していない」事が国会で明らかになったのですから全くお話になりません。

全学労組 地教委交渉、管理職交渉への足場を築く!

 「給特法改正」の国会審議真っ只中の11月29日、全学労組による文科省交渉が、社民党福島みずほ議員の紹介により行われました。

文科省からは、村尾祟初等中等教育局企画官、長谷浩之総合教育政策局教育人材政策課教員免許企画室長の出席でした。

この交渉で以下の事が確認されました。

◎「1年単位の変形時間労働制」について

①全校的に一律に実施されるものではない。それぞれの学校現場が導入について選択し、 各地教委が判断する。決定権は各現場にある。

②時間外勤務時間がガイドラインに示された時間を超えている職場には変形時間労働制の 導入の前提がない。

③所定の時間外勤務時間が守られていない、タイムカードの不正がある職場の管理職は  懲戒の対象となる。

④地公法55条に基づき変形時間労働制の導入は職員団体との交渉事項である。

⑤法案が成立すれば(選択的に)各自治体で条例の制定が必要になる。

⑥2022年度に勤務実態調査を行い、給特法の是非も含めた働き方改革の状況を確認する。

◎「教員免許更新制度」について

①教員免許が失効していても、3年間は臨時免許によって教壇にたてる。

②免許更新講習については、現状の管制研修による読み替えも考えている。

「1年単位の変形時間労働制」の導入を辞めさせよう!

銀座デモの様子

 文科省は来年度も教職員総数を減らして、教員定数を改善しようとはしていません。さらには「給特法」を廃止して労基法に基づく割増賃金を支払うこともしようとしません。

22年度に勤務実態調査を行いその結果を持って「給特法」の見直しを含めて行うとのことですが、「1年単位の変形時間労働制」導入はこの調査に向けて見かけ上の時間外勤務を覆い隠すものでしかありませんし、一層の長時間労働が強いられるに違いありません。

横校労は、教職員の大幅な増員、「給特法」廃止から時間外勤務手当の支払いを求め、「1年単位の変形時間労働制」の導入を阻止すべく市当局との交渉、職場交渉に力を入れていきたいと思います。

ご協力お願いします。

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