【変形労働時間制】残業手当のない教員に変形時間制の導入?市当局に長時間労働の常態化の懸念を申し入れる!

変形労働時間制

「一年単位の変形時間労働制」は勤務時間の際限ない延長につながる制度です。

残業手当のない状態で長時間労働が横行している教職員の現場に採用されれば、合法的に日常的に10時間もの労働を強いられる可能性があります。

これに対して今声を上げなければ、生活と職業のバランスは大きく崩れ、いずれ働き続けることが難しくなる人が増え、職場は今以上に殺伐としていくのではないでしょうか。

横校労は、横浜市当局に対し「一年単位の変形時間労働制」(以下「改正」変形労働制)の導入に反対する申入れ書を提出しました。以下に内容と問題点をまとめます。

                                                                              2020年10月16日
 「一年単位の変形時間労働制」導入に向けた条例制定に反対する申入れ


  昨年度の通常国会で「教職員給与特別措置法」の「改正」が行われ2021年度以降 教職員に対しても「一年単位の変形時間労働制」(以下「改正」変形労働制)の導入が 可能になりました。
  しかし、教職員の長時間労働が未だ解消されず、教職員の働き方についてはすでに 問題が山積している中、10時間(休憩時間を含めれば11時間)を超える連続勤務を可能にするこの制度の導入により、健康破壊がさらに進み、育児や介護、通院をしながら働き続けることが一層困難になることは明らかです。また、「在校等時間」という 曖昧な定義の導入は、労働基準法(以下労基法)36条に基づく労使交渉によって時間外勤務時間の上限制限と割増賃金の割増率の協定を結ぶことができていない状況下では、際限の無い不払い労働に道開くことに他なりません。
  横浜学校労働者組合は「改正」変形労働制の導入に強く反対する立場から以下の申 し入れを行います。
  貴職の速やかな、回答を要請します。
                     記

 1 文部科学省(以下文科省)は「改正」変形労働制の導入は選択的なものであり、自治体や各学校の実情に応じて判断されたいとしている。横浜市当局として 「改正」変形労働制導入についての判断を明らかにされたい。

 2 文科省は「改正」変形労働制導入のための前提条件は、「時間外勤務時間が月42 時間以内、年320時間以内」であるとしている。この導入の前提条件である時間外勤務時間の上限が満たされている学校数が、横浜市立諸学校(小、中、高、特別支援)でそれぞれ何校あるのか明らかにされたい。

 3 休憩時間の付与については労基法第34条により使用者の義務とされている。しか し、横浜市立学校の学校現場では休憩時間は殆どの職場で確保されていない。貴職は、その現状についてどのように把握しているのか明らかにされたい。また、多くの学校現場で休憩時間中に勤務が続行されておりこれは時間外勤務 時間にあたる。にもかかわらず、なぜ校務システムにおいて、休憩時間の時間外勤務時間の記録ができないのか明らかにされたい。速やかに記録ができる ように改善されたい。
      また、貴職が発行している「Smile」(働き方改革通信)の「時間外勤務等の実績」には、休憩時間における時間外勤務時間が加算されているのか明らかにされたい。

  4 「改正」変形労働制では、新たに「在校等時間」という語句が使われている。貴職はこの「在校等時間」とは具体的にどのような時間を示すと考えているのか明らかにされたい。また、「在校等時間」とは労働時間なのかを明らかにされたい

  5 今回の「改正」に伴う国会の付帯決議一(以下付帯決議)では、「服務監督者である教育委員会及び校長は、ICT等を活用して客観的に教育職員の在校等時間を把握するとともに、勤務時間の記録が公務災害認定の重要な資料となることから公文書としてその管理、保全に万全を期すこと」とある。しかし、学校現場では膨大な仕事に追われ、退勤のタイムカードを打刻した後も仕事を続ける、土日も含め持ち帰り仕事を抱えて帰宅するなどの教育職員が多く存在する。貴職は、付帯決議に示される「客観的な勤務時間の把握」を行えていると判断しているのかまた、公文書としての管理、保全についての現状を明らかにされたい。

  6 付帯決議三では、「服務監督者である教育委員会及び校長は・・・適正な業務量の設定と校務分掌の分担等実施することにより、教育職員の在校等時間の縮減に取り組むこと」とある。しかし、学校現場では道徳教科化、小学校の英語科の導入、新型コロナウイルス感染防止に関わる様々な業務など、むしろ業務は増加 する一方である。 貴職は縮減されない時間外勤務についてその原因は何であると捉えているのかまた、縮減するための方策を具体的に明らかにされたい。

  7 付帯決議六では、『地方公共団体は「教員採用試験の倍率低下」や「教員不足」といった課題を解決するために万全を期すこと』とある。貴職は、この二点 (倍率低下、教員不足)についての原因をどのように分析しているのか。また、解決するための具体的な取り組みについて明らかされたい。

  8 上にあげた5.6.7は国会の付帯決議のごく一部であり、「改正」変形労働制導入の前提とされているものである。従って、貴職はこの付帯決議について取り組み、労働条件の改善に取り組むべきであって、安易に「改正」変形労働制に伴う横浜市条例の制定を行わないこと。

   9 「改正」変形時間労働をめぐる諸問題については交渉を継続し問題解決を図っていくこと。
                                                                           以上

「一年単位の変形労働時間制」とは


「一ヶ月単位の変形労働時間制」はすでに職場に導入されています。

今まで曖昧であった修学旅行などの宿泊行事の勤務時間を最大11時間45分までとし,1ヶ月以内にその超過している勤務時間を割り振り勤務時間を短縮させる制度です*1。

それが1年単位になるのがこの制度です。例えば繁忙期と言われる4月、6月、10月、11月などの勤務時間を延長しその超過分を夏休みにまとめ取りして休日にするというものです。

理論上は、10時間程度の勤務時間(8時間以上労働には1時間の休憩付与が義務)11時間程度の連続勤務が可能になります。*2


*1:それまで、夜間等の業務は勤務時間ではなかったものを横校労の運動で認めさせました
*2:手続きとしては、各自治体で条例が制定された後に、2021年度より職場毎の導入が可能になります。

「一年単位の変形時間労働制」の問題点は

  1. 膨大な時間外勤務の実態を覆い隠すものであること
  2. 長時間労働の常態化の懸念
  3. 拘束労働時間が増えることにより過労で倒れる教員が増える懸念
  4. 保育園、介護施設への対応、通院などが困難

夏休みに年休を使わないで休めるなら、いい制度なのではと思うかもしれませんが、チームで働く職場にこの制度を当てはめたら、長時間労働が状態化する懸念があります。

皆さんは簡単にその状況を想像できるのではないでしょうか。

年休もほとんど消化できない職員も数多くいる中で、「夏休みにまとめどり」などと言っていること自体、実態を知らないと言わざるを得ません。

民間の企業と教職員職場との違いは

民間企業では、恒常的な時間外労働がない事業所を前提としていて、更に経営者側に過半数の労働者代表との交渉を義務付け一方的に恣意的に導入することを禁じています。

また労働基準監督署によるチェック機能が働きます。ところが、教職員の職場ではこれらの権利がありません。労使交渉なしで横浜市の条例によって一方的に労働条件が決められてしまいます。

申入れの事項の8で、「条例の制定をしないこと」を要求し、同じく9で交渉の継続を求めているのはこの事によります。

  そもそも民間企業においても、「一年単位の変形時間労働制」は使用者の業務形態の都合で労働者の「残業代」を抑制するための制度と批判を浴びている制度なのです。

これを読んでいる皆さんにできることは

 ○この事実をより多くの職場の仲間と共有していきましょう。多忙を極める職場で、自分の労働環境を省みることなくがむしゃらに働いている仲間にこそ、この内容を知ってもらいたいと思います。


 ○集会に参加してください。より多くの情報を得ることは、そのままあなたをエンパワーします。この制度が導入されて、働き続けられない仲間を出さないためにも、そしてなにより自分が働き続けるためにも反対の声をあげましょう。

「横校労」は文科省との交渉で、「改正」変形労働制の導入は選択的なものであり、自治体や各学校の実情に応じて判断されたいなど様々な確認を行い、制度が導入されないように運動しています。


また国会では、導入に際しての様々な付帯決議がつけられています。申ししれ書の5.6.7.では、その付帯決議を取り上げ回答を求めています。

そして、「横校労」は「はねかえせ 変形時間労働制!」集会を開催します。集会では「改正」変形労働制の国会審議の場で参考人として意見陳述をされた嶋﨑弁護士をお招きしてお話をお聞きします。

集会に参加され、働きやすい職場作りを前進させましょう。

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