【36協定】学校、この先の問のためにー情報公開で見えた横浜の実態ー

突然36協定が舞い降りた!

 労働基準法では、労働者が法定労働時間を超えて働いたり、法定休日に働くことは原則禁止とされています。

その例外を法的に認めるために必要なのが「時間外・休日労働に関する協定届」といい、一般に36協定と呼ばれます。

これは、使用者が、労働者の過半数で組織する労働組合、それがない場合は、労働者の過半数を代表する者との間で、労働時間の延長や休日労働などの措置について書面を交わし合うものです。

 しかし教員は給特法により協定の適用除外とされ、用務員と給食調理員は別途締結済みなので、結果学校では、事務職員と学校栄養職員が協定の対象者になるのですが、これまでの長きにわたり協定を結ばず「違法」状態できたことが明らかになりました。

そこで横浜市教委は、「労働者の過半数で組織する労働組合」と36協定を締結しました。

高校は全て浜高教が過半数を組織しており問題はないのですが、小中学校、義務教育学校、特別支援学校は、最大手の浜教組が「労働者の過半数で組織する労働組合」としてこれら全てを組織化できてはいません。

 そこで市教委は急遽「労働者の過半数で組織する労働組合」がない学校へ、①労働者の過半数を代表する者を「選出」し②使用者の校長と36協定を「締結」する、旨の通知を出したのでした。

年末を挟んだ忙しい時期だったことや、実際の対象者は校内にほぼ一人しかいない事務職員であったことなどで、多くの学校では余り内容が周知されないままに事は進んだ感があります。

組織率半数以下の学校はどこか?

 横校労は、「労働者の過半数で組織する労働組合」がない学校へ通知が出されたので、その通知先が分かれば、市内の学校労働者の組織態様把握の一助になるのではないかと考えました。

そこで昨年11月に「『36協定』のために、該当校に送付した文書の宛先(学校名)がわかる文書」を市教委に情報公開請求したのです。

12月半ばに届いた通知は非開示決定。理由は「公にしないとの条件で団体から任意に提供された情報をもとに作成しているため」というもの。

つまり、市教委は浜教組から「外に出さない」という条件で得た学校名とその所属組合員数から、過半数に満たない学校を割り出し、通知先としたことが分かりました。

 しかしこの非開示理由は納得できるものではありません。

なぜなら、市教委はこの情報、学校名と組織率を「公にしない」約束で取得したと言っているのですが、この通知を受け取った学校の全職員が、自分の学校では浜教組が職場の過半数に達していないことを自動的に知るのです。

つまり、その時点で情報は既に市教委自身の手で「公」にされているではありませんか!3月に決定に不服ありとして、審査請求を届けました。

一転驚きの裁決が!

 審査請求は、市教委が「横浜市情報公開・個人情報保護審査会」に諮問し、そこで、非開示を妥当とする市教委の弁明、それに反対する我々の反論や意見陳述等を経て、審査会の答申を出します。

市教委は答申を受け、開示や非開示等の裁決を最終的に行います。

これが審査請求の流れですが、市教委が審査請求を受けた段階で開示できると判断し、審査会に諮問せず請求を容認する裁決をする、ことも可能ですが、当然それは自らの判断を覆すことであり、殆どあり得ないでしょう。

 しかし、そのあり得ないことが起きました。請求から一ヶ月後、市教委から届いた文書の主文は「本件処分は、これを開示する決定に変更します」。

仰天!我々の審査請求は諮問されることなく、全部開示に変更されたのです。

「開示請求のあった文書は、公にしないとの条件で当該団体から任意に提供された情報をもとに作成したものであり(…略…)非開示としたところですが、本件審査請求を受けて、改めて当該団体と協議しました。その結果(…略…)36協定のための文書が送付された学校では、全職員がそのことによって自校が対象校である旨知ることになるため、当該団体としては、更に諸般の事情も鑑みつつ、開示することもやむを得ないとの判断になりました」と書かれていました。

裁決理由の文言の大半は、我々が審査請求書に書いたものをほぼほぼなぞっていて、全面勝利!とかちどきをあげるより、ハァ〜と拍子抜けするほど市教委の情けなさを感じた次第です。

労働組合は学校にあるのか?

 開示された宛先が書かれた文書はA4版で5枚。列記された学校名を数えてみると、市内全校のうち、小学校の15%、中学校は義務教育学校を含め64%で、浜教組の組織率が半数を割っていることが分かりました(昨年度末時点)。

更に特別支援学校では全ての学校が半数割れという結果でした。校種別のこの違いは、たまたまこうであった、という以上に、校種毎の日々の働き方、職場の在り方と関連しているのではないか?真っ先にそんな印象がわきました。

労働組合の存在感や存在理由が、校種によって異なっているのではないでしょうか。労組がなくとも問題ないのか、労組そのものが不要なのか、労組自身が己を見失ったのか。この結果から思うことは様々です。

 そしてもう一つ。今回通知のあった学校は、市教委から、過半数を代表する者の「選出」を委ねられたのですが、150を超える学校それぞれで、その選出はどのように行われたのでしょう?

いや、そもそも事前に今回の説明がしっかり周知されたのでしょうか?

そして、選出に際し推薦や立候補の公募はされたのか、選出は挙手か投票か、使用者である校長の関与は排されていたか、等諸々の手順はきちんと踏まれていたのでしょうか?気になるところです。

 冒頭で書いたように、今回の事態は「違法」状態という事実から動いた出来事でしたが、教員が36協定の適用除外とされる給特法がこの先も永劫に続くことはありません。

いずれ職場職場で自分たちの労働条件を使用者と書面で交わす日が必ず来るでしょう。その時、問われるのは、自分の職場に労働組合は存在しているのか?ということなのです。

そういう意味では、年末の出来事は練習問題だったと言えるかも知れません。

 過半数のない学校での代表者選出は、この先も毎年行われます。(今年度は用務員も協定の対象者に加わります)

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