【人事委員会勧告】採用希望者減少は賃金アップで解決できない

人事委員会勧告

10月18日、本市人事委員会より給与勧告の説明会が関内駅前第一ビルで行われた。

勧告の概要(詳しくは横浜市HP)は、月例給の改定は「給料表を改定する。新規学卒者に対して適用する初任給について、大学卒は2,000円、高校卒及び短大卒は3,000円引き上げる。その他、若年層について、所要の改定を行う。」であった。

なお、説明会は、人事委員会側4名と各組合から5名のみで閑散としていた。

人事委員会勧告に基づく給与改定に関する要求書

これを受け、10月30日、市教委労務課より勧告通りの給与改訂の提案があり、横校労は以下の要求書を提出。

2019年11月13日

横浜市教育委員会

教育長 鯉渕 信也 様                     横浜学校労働者組合                              執行委員長 平川正浩

   人事委員会勧告に基づく給与改定に関する要求書

横浜市人事委員会が「給与に関する報告及び勧告」で示す労働経済指標では、「消費者物価指数」は2018年度で全国0.7%上昇に対し横浜市が0.8%上昇と僅差である。しかし、「消費支出」は2018年度で全国が315.3千円で前年度比0.7%上昇に対し、横浜市は313.4千円で前年度比マイナス13.6%となっている。2019年度の「消費支出」は、確認できる4か月ではマイナス12.6%であり、2019年10月の消費増税を考慮すれば、マイナスはいまなお継続していると考えられる。景気を左右する消費支出が前年度比マイナス13.6%であれば、対策は必要不可欠である。

このように本市の消費が落ち込んでいる状況では、若年層のみへの賃金改定は適切ではない。40代、50代の勤労者世帯は、教育費の増加や介護保険料などによる非消費支出の増加で、消費支出が抑えられており、本市教員も例外ではない。また、本市教員の多くは「県費負担職員の政令市費化」による住居手当の漸次的廃止により、住居購入を促されている。これによる固定資産税負担は、非消費支出の増加を意味する。40代、50台の教員への消費支出を後押しするには賃金アップが必要である。

特に教育職員での採用希望者が減少傾向は、2002年以降の教育改革で導入した人事評価、主幹制度、小学校での英語教科化、道徳教科化など教員の勤務とのバランスなど一切省みることなく、政府や文部科学省で企図された政策を拙速に導入した結末である。採用希望者減少や定数確保ができない状況は、もはや賃金アップでは解決できない、質の違う課題である。当組合が以前から指摘している「持続不可能な教育環境」をなぜ招いたのか虚心に考えることこそ、教育委員や事務局職員がなすべきことである。

よって横浜学校労働者組合は以下の事を要求する。

1 消費支出の冷え込み、長時間労働解消への具体的な策動の遅れを勘案し、月例給の改訂を全ての職員について、1000円引き合上げる改定をおこなうべきである。

2 人事委員会が把握する休憩時間が取れていない状態は「横浜市立学校教職員の働き方改革プラン」の遂行の問題ではなく、労基法を遵守するという極めて当然な遵法意識、基本的な労務管理によるものなので、直ちに対策を講じること。

以上

交渉のやり取り

この要求に対して、11月20日、交渉のテーブルに臨んだ。以下は要求に対する当局の回答と交渉でのやり取りの一部。

1について

「給料表の改定については、提案時に申し上げた通り人事委員会勧告に基づき行います。」

2について

「休憩時間については、法令上義務付けられている趣旨を踏まえ適正な確保をお願いしています。まとまった取得が困難な場合でも、交代や分割等により確保して頂くようお願いしています。」

横校労:「人事委員会勧告にあった、新規採用の応募者の確保を目指した提案なのか?」

労務課:「その通り」

横校労:「採用希望者の減少は、賃金の問題ではない。ここ数年、メディアで取り上げる教員の勤務条件の厳しさによるもの。3000円程度ではカバーできない。」

労務課:「報道も色々ありブラックと宣伝され過ぎている印象もある。先生方の勤務条件、環境を改善していきたい。働き方改革プランにより、劇的な策はないが地道に進めていきたい」

 ならば「先ず休憩時間が取れていない現状を認めろ」である。が、これは、労務課に対策を求めるよりも他の手段に移行すべきステージに来ているので、深追いをせず。

交渉決裂 採用希望者確保には焼け石に水

 本年度の本市採用試験の競争率、小学校では1.9倍、中学校4.7倍、特別支援2.6倍、養護6.1倍で全区分で前年より低下している。

最終合格者の中には採用までに辞退する者もおり、水面下ではさらに厳しい人員確保の実態がある。これは根本的には「給特法体制」とそれを極限まで曲解、悪用してきたツケである。

採用希望者を確保するために若年層のみ月例給2000円アップなど焼け石に水。本来、公民格差を是正するはずのわずかな賃金アップは、行政主導の教育政策が招いた結末の尻拭いに消えてしまうのだから空しいものだ。

当組合の交渉は決裂に終わった。

「政令市費化」以後、賃金交渉に臨むようになり毎年思うのだが、大組合がこのような賃金改定に妥結するのは理解不能だ。

安易な妥協は行政に利するだけで、労働組合としての存在意義はないに等しいではないか。

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